三菱重工が米国の小型ジェット旅客機整備拠点を増強する事情
三菱重工業はカナダのボンバルディアから買収した小型ジェット旅客機の保守・改修体制を増強する。カナダ子会社のMHI・RJアビエーショングループ(MHIRJ、ケベック州)が、2000万ドル(約22億円)を投じて米国ウェストバージニア州のサービス拠点を拡張する。米国では旅客需要の持ち直しで航空機の運航が再開され、整備能力を高める必要がある。
MHIRJはサービス拠点の拡張で二つの格納庫を整備し、1年半後をめどに運用を始める予定。小型旅客機「CRJシリーズ」向けのサービス需要を取り込み、一度に受け入れられる機数を最大20機に増やす。
三菱重工は開発していた小型旅客機「三菱スペースジェット」のサービス網を整えるために、CRJシリーズの保守や改修、マーケティングなどの事業を2020年に買収。しかし新型コロナウイルス感染拡大などを受け、MSJの事業化を事実上凍結した。一方で経済再開やワクチン接種の進展により、CRJシリーズの運航が徐々に再開され、整備需要が回復しつつある。同シリーズの機体生産再開も視野に入れる可能性がある。
小型旅客機の場合、1日に複数回飛行し、保守・改修体制の確立が不可欠。MHIRJは拠点拡張とともに、サービス人員を確保する方針だ。三菱重工は米ボーイング向けの機体生産がコロナ禍前の水準に回復するのは時間がかかる見込みで、サービス関連の収益力を強化する。
日刊工業新聞2021年8月24日