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勤務形態の多様化に対応する食事補助、そのメリットとは

コロナで変わる福利厚生 #1 食事補助(前編)

コロナ禍に伴うテレワークの普及により、社員が出社し、社員食堂を利用するといった今までの形態が揺らぎ始めている。健康的で栄養価の高い食事の提供が困難になれば従業員の健康管理にも影響が及びかねない。従業員の活力向上をもたらす「健康経営」が投資家から注目される中、経営者には従業員に対する食生活の改善が求められている。(取材・長澤実怜)

チケットレストランで変わる福利厚生

コロナ禍より30年以上前から従業員の食の問題に取り組む企業がある。エデンレッドジャパンだ。食事補助ソリューション「チケットレストラン(Ticket Restaurant)」を提供し、国内の導入企業は 2000 社に上る。チケットレストランは、会社からの食事補助により、栄養バランスのとれた食事を従業員がより気軽に食べられる仕組みで、社員食堂を持たない企業や拠点でも、福利厚生としての食事補助を受けることができる。 

具体的には、食事にしか使えない電子マネーをエデンレッドが企業に代わり発行する。6万2000店舗ほどの加盟店でこの電子マネーを利用すると実質半額で食事が摂れるという仕組みだ。 事前にチャージする際、一定要件(※)を満たした場合、会社からの食事補助を所得税法上、非課税で受けることができるメリットがある。

利用状況としては大企業、中小企業、業種問わず様々な企業が利用しているが、特に運送業、派遣業など働く場所が日によって変わったり、顧客優先で働き方が決められていたりする業種が多い。

企業経営の観点からも効果は大きい。中小企業においては社員食堂を置くよりもコストを少なくできることや、社員が自由に選択し、好きな場所で食事をすることができるメリットがある。また、食事補助を行うことで会社全体のエンゲージメントが高まり、人材定着などの人事的側面からもメリットがある。

エデンレッドは世界 47 か国でサービス展開を行っている。海外ではトラックドライバーに向けてのガソリンスタンドで利用できるサービスの提供やヨーロッパ地域では眼鏡に利用できるクーポン発行、イギリスではチャイルドケアに利用できるサービスを提供している。国の特性に合わせ、特定の分野に利用ができるサービスを提供している。「詳しい顧客満足度を図るのは難しいが、利用率は 99%以上であり、 チャージしてからの利用速度も速いため総合的に満足してもらえているのではないか」とエデンレッドジャパン営業部の高橋偉一郎部長は話す。

ウルグアイで従業員の食料品購入に使われている「チケットアリメンテシオン」
世界20か国で導入されているモバイルチケットレストラン

包括的な支援を

今後としては非課税枠を広げて行くことで、飲食業界に貢献したいと高橋氏は話す。エデンレッドはコロナ禍で経営状態が厳しいとされる飲食業界に向けて送客する使命感を持つ。飲食店あってのサービスであるため、少しでも飲食業界の支援に繋がればという思いだ。

近年では、在宅勤務による会社への帰属意識の希薄化に対して、食事補助を提供したい、忘年会などが行うことができないという状況でもう一度会社の福利厚生を考え直したいといった問い合わせが増えているという。在宅勤務が今後も活用されうるとするならば、食事補助は社員の福利厚生として有効的であると言える。

インタビュー エージェントグロー企業戦略室室長・齊藤剛史

実際にこの食事補助を導入した企業の一つにエージェントグローがある。当社は派遣型エンジニア事業であるSES事業とソフトウェア開発事業であるSaaS事業を手掛ける。エージェントグロー企業戦略室で室長を務める齊藤剛史氏に食事補助導入に至るまでの経緯と今後について話を聞いた。

―チケットレストランを導入しようと思ったきっかけは。

—弊社はエンジニアを必要とする企業に派遣するシステムをとっており、外で働くエンジニアに向けてどのような福利厚生を提供できるかは従来課題であった。その中で健康を意識したものが良いと考えていた時にある社員がチケットレストランを提案してくれたことがきっかけだった。

―実際にサービスを使用していて良かった点とあればいいと思うサービスは。

―300名弱のほとんどの社員が非課税枠で利用し、個人としても会社としても助かっている。本社に勤務するのは僅か10名ほど。従業員がどこでも使える食事補助であり、帰属意識も高まるのではないかと感じている。サービス自体には非常に満足している。対応飲食店を今後増やしてもらえればなおいいのではないか。

―今後どのように利用していきたいですか。

―以前はお客様優先で現地に向かうことが多かった。コロナ後はテレワークで勤務することが大半になったが、外でエンジニアが働く点において変わりはないため、継続利用するつもりだ。  飲み会なども行われない期間においては食事補助のカードに書かれている社名で帰属意識に何らかの効果があると感じているため、そういった意味でも利用していきたい。

―数ある企業の中でエデンレッドを選んだ理由は。

―食べたいものは人によって違う。食事では個々人が健康に対して自由に選択ができるというサービス形態であるため、利便性が高いと感じた。

―今後改善したい福利厚生はありますか。

―緊急的なものはない。どうすれば気持ちよく社員が働けるか、そのための福利厚生を考えるフェーズだが、今ある食事補助を始めとする福利厚生を拡充することも考えられる。

(※)月々の会社からの補助額が3500円+消費税、軽減税率では3780円以下、従業員が同額以上の負担
日刊工業新聞2021年8月26日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
時代の変化に応じて、社員の福利厚生も転換期に来ている。もう一度社員の食事という身近な福利厚生を考えることが、長期的な観点で重要である。

特集・連載情報

コロナで変わる福利厚生
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コロナ禍で急加速したリモートワークなどに対し、「出社」や「リアルでの交流」をベースにした福利厚生の見直しを計る企業が増加している。社員が求める福利厚生の内容も、これまで多かった休暇・娯楽分野から、ヘルスケア・生活サポートへと転換しつつある。サービス提供企業と、導入企業の現状を取材する。

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