従業員をつなぎ留める!人材定着支援「ハイジ」とは?
【意識変化を把握】
OKAN(東京都豊島区、沢木恵太社長、050・1746・1112)は、従業員の企業に対する信頼や貢献意欲を表す「従業員エンゲージメント」の可視化ツールを活用した人材定着支援サービスに取り組んでいる。会社の状況や従業員の意識の変化を適切に把握し、課題解決に役立ててもらうのが目的だ。コロナ禍の影響で働き方が大きく変わる中、離職を防ぐ環境づくりを下支えする手法として注目が集まっている。
「ミッションは働く人のライフスタイルを豊かにすること」。佐々木勇介取締役がそう強調するように、同社は従業員の働きやすさの支援を事業テーマに掲げている。総菜を社食として提供する「オフィスおかん」も同様の考えに基づくサービスだ。食事の提供を通じてコミュニケーションの活性化など、職場環境の改善効果を引き出す狙いがある。
オフィスおかんに続くサービスとして2019年7月に提供を開始したのが、従業員の離職防止を目的とする「ハイジ」だ。従業員に対して約50の質問からなる簡易なアンケートを実施。その結果の分析を基に、組織内の状況や傾向を把握した上で対策の助言などを行う。
【働きやすさ着目】
アンケートでは従業員が重視する価値観を「やりがい」「経営への信頼」といった15の要素の中で順位付けする。回答した人数も分かるため、どんなサポートを行うべきかが明確になる。
離職に関わると言われる従業員エンゲージメントへの注目度は年々高まっており、可視化サービスを手がける企業も増えてきた。調査項目として多くの企業が生産性の向上にかかわる要素を重視する中で、同社は人間関係や健康など「働きやすさ」にも着目。「両方の要素をバランスよく調査項目に反映させている」(佐々木取締役)のが特徴だ。
また、人材確保への対応で自社の魅力向上を重視する企業も増加しており、業種や規模が異なるさまざまな企業で「ハイジ」の導入が進んでいる。佐々木取締役は「社内での人材定着への取り組みには限界があり、専門的な知見や手軽に実現できるツールへのニーズが増えている」とし、一層の需要拡大を見込んでいる。
【組織の健康診断】
労働人口の減少による人手不足や流動性の向上に伴って、離職をいかに防ぐかが重要テーマとして企業にのしかかってきた。一方、仕事に対する従業員の価値観も多様化し、収入や地位以外の要素を重視する傾向が強まっている。
離職者が出てから新たに採用するという事後対応では、採用や育成の費用をはじめ経済的な損失が大きく、企業の基盤を揺るがしかねない。
これを回避して従業員が安心して働き続けられる環境を整備し、企業の成長にどうつなげるか。“組織の健康診断”用のツールとして状況を正確に見極め、離職が発生する前段階で対策を講じられる人材定着支援サービスへの期待が今後さらに高まりそうだ。(群馬支局長・古谷一樹)