【ディープテックを追え】聴診器に”200年”越しのイノベーションを!医療変革を目指して

#13 AMI

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「急激な医療革新」を掲げるAMI(エーエムアイ、鹿児島市)。その原点は、医師でもある小川晋平社長が感じた医療現場の変革の必要性だ。例えば、「ドクターヘリで患者の身体は急ピッチで運ぶのに、カルテのデータは紙やUSBを物理的に移動させて運んでいた。これはどう考えても変だと感じた」(小川社長)。

その現状を変革するべく開発しているのが「聴診器」。これまでの聴診器のように音を聴くだけではなく心電と心音を解析し可視化する、名付けて「超聴診器」だ。登場から200年近く基本構造が変わっていない聴診器にイノベーションの波が起きようとしている。

医師の基本

医師の基本とされる聴診器は心音や呼吸音など、「身体の音」を聴くことで体の異常を発見する道具だ。診断の基本とはいえ、音を聴くのはあくまで人間。診断する環境や聴く人の体調によっては、意識を向けていない音や疾患の兆候である極めて小さな音を聞き逃してしまう恐れがある。また、心音を構成する多くの音は100ヘルツ以下の音が中心だ。若い人でも20ヘルツ以下の音は聞こえないとされている。

「聴診器と超音波の間くらい」の超聴診器

同社の「超聴診器」

そこで、超聴診器は心電と心音を同時に取得し、心臓が血液を送り出す収縮や拡張のタイミングに合わせて心音を重ねて表示することで可視化する。同時に人が知覚できる可聴周波数帯域の音質を向上させると共に、知覚できない非可聴周波数帯域の解析にも力を入れており、いずれの帯域でも心音を色の濃淡や波形で表現し聴診を支援する。心電図情報も組み合わせることで、心臓の状態を可視化できるようになる。小川社長は「聴診器だけでも、心電図だけでも把握しきれない兆候をキャッチできる。ただ、今の聴診器が全て不必要になるわけではない。イメージとしては聴診器と超音波の間くらいに位置する製品だ」と説明する。

小川社長(写真は同社提供。取材はオンラインで実施)

また、超聴診器で集めたデータを活用し、人工知能(AI)による診療アシスト機能を搭載することも視野に入れる。小川社長自身も他の医師のアドバイスで、患者の気づきにくい心音を見つけたことがあるといい、「人間の意識や経験だけでは見逃してしまう可能性もある。AIによるアシストで医師が見逃してしまう部分を補うことができる」と話す。2022年春頃の製品化を予定し、23年にはAIによる診断アシストの搭載を目指す。

遠隔医療にも応用

この超聴診器を使った遠隔医療の実現にもチャレンジしている。熊本県水俣市では18年から、遠隔システムを活用した予備健診「クラウド健進」の実証をしている。

超聴診器を使っている様子。真ん中に見えるのが超聴診器が計測した心音と心電

クラウド健進は心音の測定や指先採血、経皮的血中酸素飽和度などの計測データとビデオチャットシステムを組み合わせて行う。小川社長は「問診だけではなく、遠隔聴診や各種測定を組み合わせることで、オンラインでの医療の質を高めることができる」と力を込める。また、ネットワークさえ繋がれば、医療行為を提供できるため、災害時にも活用できる。今後、過疎化が進む自治体などを中心に検証を進める。

ただ、超聴診器の実用化は同社にとって通過点に過ぎない。今後は心音だけではなく、呼吸音など他の生体音も解析できるように研究を進める考えだ。

一方、小川社長自身は「将来の医療イノベーションがどうなっているか、言語化して想像することは難しい」と話す。実際、コロナ禍で浸透したオンライン診療が意外にも使いやすいことを想像できた人はそう多くないだろう。それでも「近いところの目標を順次クリアしていくことで、その言語化できないところに近づける」と展望する。自分で聴診器を当てる-。それは間もなく訪れる「急激な医療革新」の第一歩だ。

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COMMENT

小林健人
デジタルメディア局DX編集部
記者

コロナ禍で遠隔医療、診療の言葉を耳にすること増えたのではないでしょうか。私も別の取材で遠隔診療を体験しましたが、問診など医師との対話が中心になる印象を受けました。AMIの超聴診器を使えば、生体データを見ながら診察できるため、医師と患者の互いにメリットがあります。過疎地域の医療をどう守るかという観点からも、テクノロジーがいかに寄与できるか気になります。

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