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脳活動計測の解像度を高める新発想の技術とは?

脳機能的磁気共鳴イメージング法(fMRI)は、脳機能の研究で広く用いられている計測法である。しかしながら、通常よく用いられている3テスラMRIを使った計測では、その解像度には厳しい限界があり、数ミリ程度の広がりの中での平均的な神経活動を捉えているにすぎない。ましてやその神経活動の「内容」、すなわち、その「広がり」の中での活動の様子を知ることは不可能である。脳情報通信融合研究センター(CiNet)の私たちの研究グループは、新しい発想に基づく計測技術をハード・ソフトの両面から開発することで、人間の脳活動に対するfMRIの解像度を神経活動の機能単位(大脳皮質のカラム・レイヤ構造)レベルにまで高めることに挑戦している。

大脳皮質はカラム(柱)構造とレイヤ(層)構造を持つ機能単位から構成され、前者はおおむね0・5―0・8ミリメートル程度の大きさであり、後者は薄いところで0・2ミリメートル程度の厚みを持つ。機能単位での脳の振る舞いをfMRIにて非侵襲的に捉えることができれば、脳情報科学が著しく加速することは明白であるが、通常よく使われる3テスラfMRIの解像度はおおむね2―3ミリメートル程度であり、機能単位を解析するには不十分である。

私たちは、通常のMRI装置ではなく、超高磁場MRI装置(7テスラ―MRI)を使用し、特殊な撮像法と画像再構成法を開発した。この装置を用いることで、人間の脳において、0・6ミリメートル角という高空間分解能fMRIデータ取得に成功した。

また、高い時間分解能を維持しながら、信号ノイズ比と空間分解能に優れるfMRIデータを取得し、解析する技術開発に取り組み、弱い脳活動(30ミリ秒の視覚刺激の数回繰り返し)でも高空間分解度(0・7ミリメートル角)で観察できるようになった。このような高精細なfMRI計測では、被験者の動きも重大なノイズになる。

そこで、被験者の動きを補正する新しい方法を開発し、検出できる脳活動の最小単位(ボクセル)の数の向上を確認できた。現在は、もう一段高い分解能を達成するべく、さらなる新しい解析技術の研究開発を進めている。

未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター・脳機能解析研究室 研究マネージャー 劉国相(リュウ・グオシャン)
2002年徳島大学工学博士学位。同年から小川脳機能研究所で2年半脳機能研究を経験し、04年情報通信研究機構(NICT)入所、13年から現職。7テスラ―MRIを用いた超高分解能fMRI計測技術の開発に従事。
日刊工業新聞2021年6月22日

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