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事業承継と引き継ぎ支援の相談・成約件数が過去最高になった事情

事業承継・引継ぎ支援センターの相談・成約件数が伸びている。中小企業基盤整備機構がまとめた調査によると2020年度は相談・成約件数共に過去最高だった。親族以外の第三者に事業譲渡を検討する後継者不在の中小・小規模事業者が増えていることなどが背景にある。同センターは事業承継に課題を抱える中小のニーズに応じて金融機関や民間企業など外部機関との緊密な連携を強化し、企業の休業・廃業の回避につなげる。

事業承継・引継ぎ支援センターは国からの委託で中小・小規模事業者に対し、事業承継を目的としたM&A(合併・買収)を支援する地域の相談機関として、全国48カ所に設置されている。4月には親族外に加え、親族内承継も支援対象に加え事業承継に関する相談全般にワンストップで支援できる体制を整備した。

20年度の同センターの相談者数は前年度比1%増の1万1686者、成約件数は同17%増の1379件でそれぞれ過去最高を更新した。成約譲渡企業の業種別では「サービス業・その他」が31%と最も多く、「製造業」が23・4%、「卸・小売業」が18%と続いた。売り上げ規模は「3000万円超―1億円以下」が最多の35・1%を占め比較的小規模な企業の成約が目立つ。

成約・相談件数共に伸長する背景の一つに事業承継の選択肢に第三者承継を加える経営者の増加がある。創業や規模拡大を目指す意欲ある創業希望者や経営者に事業を引き継ぐことで、企業や事業の再成長や従業員の雇用維持が期待できるためだ。

センターでは第三者承継で事業譲渡を希望する企業の相談案件などをデータベース化し運用。政府系金融機関や会計士、税理士などと情報共有しながら、譲渡希望側と譲受希望側のマッチングを行っている。

今後はM&Aのマッチング支援を行う民間企業との連携やセンターで支援に携わる人材の育成を強化し相談対応や成約件数の向上を目指す考え。円滑な事業承継を後押しし、休業・廃業による経営資源の散逸防止につなげる。

日刊工業新聞2021年7月16日

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