日本がリードする「全固体電池」の開発競争。迫る中国・欧州勢を突き放すカギは?

材料に課題、実用化急ぐ 液系研究も継続

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自民党本部で11日に開かれた「未来社会を創出する、バッテリー等の基盤産業振興議員連盟」の設立総会

電気自動車(EV)の性能向上のカギと言われる「全固体電池」の開発競争が熱を帯びている。日本がリードしている分野だが、中国や欧州も追い上げをかける。特許数では中国が日本に迫っており、欧州は自動車メーカーが新興の電池メーカーと組むなどして一気に開発を進めようとしている。ただ実用化には材料開発などで解決すべき課題も多く、既存の液系電池の研究開発も引き続き重視すべきだとの指摘が挙がる。(日下宗大)

「電池分野は日本がまだ半歩リードしているが、追いつかれる脆弱(ぜいじゃく)性がある」―。

6月に自民党本部であった国内の蓄電池産業の競争力強化を目指す議員連盟の設立総会。会長に就いた甘利明党税制調査会長はこう危機感をにじませた。その上で全固体電池を念頭に「新しい電池をいかに早く投入するかが最重要課題だ」と力を込めた。

全固体電池は電気を通す電解質が液体ではなく固体のため、液漏れの心配がない。さらにエネルギー密度を高められるとされ、EVの航続距離を飛躍的に伸ばせると言われている。

全固体電池はトヨタ自動車をはじめ、日本勢が研究をリードしてきた。しかし最近では中国勢や欧州勢も実用化に向けた動きを加速させている。経済産業省の資料によると、全固体電池の特許に関する国別の割合は日本が37%に対して中国は28%と肉薄しつつある。

欧州では独フォルクスワーゲン(VW)がEV用電池を開発する米クアンタムスケープと18年、全固体電池の生産を目指す合弁会社を設立した。合弁会社は24年にもVWなどへの供給を始めたい考えだ。

独BMWと米フォード・モーターも全固体電池の開発を手がける新興企業の米ソリッドパワーへ出資している。ソリッドパワーは22年初頭に試験ラインで全固体電池の生産に着手する。BMWは25年までに全固体電池を搭載したデモ車両の発表を計画する。

国内ではトヨタが20年代前半の全固体電池の実用化を狙う。日産自動車やエンビジョンAESCグループ(神奈川県座間市)は30年までに市場投入を狙う。AESCは「パウチ型」と呼ばれる積層型の電池を手がける。松本昌一社長は「パウチは全固体電池と親和性が高い」と優位性を訴える。

ただ全固体電池は現状、期待過多の側面もある。松本社長は「いかにも(EVの課題を)全て解決できるという考えが先行しすぎている」と指摘する。「一気に全固体電池に変わるわけではない。液系電池も(技術進歩で)良くなっている」と強調する。

全固体電池は材料の膨張収縮など解決すべき課題も多い。水分管理も難しく従来の液系電池の設備をそのまま転用できない。性能とコスト軽減の両面で実用化にはまだまだハードルは高そうだ。

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日刊工業新聞2021年6月29日

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