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副業・社内兼業・社外人材受け入れ、九州電力が新制度を始めた事情

九州電力は5月、副業や社内兼業など5項目の新制度をスタートさせた。グループの九州電力送配電(福岡市中央区)と併せて「社員が積極的に挑戦できる組織風土づくりや、多様な人材が活躍できる基盤整備」(九州電の池辺和弘社長)を進める。

柱は大きく2本。人材の能力拡大を促す正社員向け制度と、社内の多様化に向けた社外人材の受け入れだ。前者では副業と社内兼業、自費での進学・留学目的の休職の三つを新設。後者としては社外の副業・兼業人材の活用と、転職・起業による退職者を再雇用する仕組みを設けた。

副業は事業創出や競争力強化につながる仕事について就労時間外で認める。電力会社特有の災害対応など、本業への影響を勘案して許可する。3交代制の職場など導入に課題も残るため、まず全社員1万2000人のうち本社勤務2300人を対象に試行する。

兼業では本社の企画立案を主体とする職場を対象に、異動を伴わず他部署の仕事を勤務時間内で15%ほど担う。所属を超えた能力発揮やアイデア実現の機会を設けて「個人の成長と人材シナジーによる新たな価値創造」(人材活性化本部の津野喜久代部長)を図る。

社外の兼業・副業人材の受け入れでは、経験者採用や短期雇用といった現行制度と使い分けながら知見を社内に取り込む。

制度新設の背景にはグループ事業の領域拡大がある。電力自由化に伴い、電気事業の競争力向上や非電力部門の強化は不可欠。イノベーション推進による事業創出や業務効率化を進めてきたが、さらに人材の多様化を制度面で促す。

津野部長は「異分野に打って出るときに経験やマインドを培うことが必要」とする。「社内育成もするが、社外で経験を積み、いろいろな視点を持つ社員が新しい世界を開拓すること」を目指す。今後は60歳前後の社員を対象にした、セカンドキャリア支援の副業・兼業制度についても導入を見据える。

日刊工業新聞2021年5月18日

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