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重要性高まる「サステナブルファイナンス」、今後の好機と課題
金融庁・有識者会議が提言
各国の脱炭素化目標がひしめく中、それを実現し、持続可能な社会を実現するための成長資金を賄う「サステナブルファイナンス」の重要性が高まっている。世界のESG(環境・社会・企業統治)投資額の残高は3000兆円に到達。中でも調達資金を温暖化対策事業に充てる債券「グリーンボンド」の発行額は、2016年からの4年間で約3・5倍に増加した。こうした民間資金を日本に呼び込むために、市場の環境整備が喫緊の課題に挙がった。
日本政府は2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)、30年度までに温室効果ガスの排出量を13年度比46%削減する目標を掲げている。この実現に向けて、サステナブルファイナンスをはじめとする民間の成長資金の活用が重要だ。
金融庁は5月28日に有識者会議を開き、グリーンボンドの取引を活発化させようと、「グリーン国際金融センター」の実現などを盛り込んだ報告書案を示した。ロンドンや香港の取引所などでは、グリーンボンドをはじめとするESG関連債に関する情報発信の強化や人材育成、ESG関連インデックスの提供などの取り組みが進められている。
世界のグリーンボンドの発行額は16年の約9兆1900億円から、20年には約3・5倍の約31兆7900億円に増加した。20年の日本のグリーンボンドの発行額は約1兆円で、欧州や中国と比べると低い水準。日本でも市場活性化のために、情報発信の一層の取り組みとともに、通常の社債などを扱う市場とは別にグリーンボンドを扱う市場の創設を目指す。グリーン国際金融センターの設置場所としては、日本取引所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所などが候補に挙がる。
グリーンボンドなどのESG関連債の組成や販売では、通常の社債より一層の透明性の向上が求められる。環境改善効果がないにもかかわらず、あたかも環境に配慮しているとみせかける「グリーンウォッシュ」などが増加しかねないためだ。国際標準化機構(ISO)でも、グリーンボンド・ローンの発行や融資手順に関する国際規格である「ISO14030―1」から「ISO14030―4」を作成する動きがある。報告書案では「日本においても、ESG関連債の適格性を客観的に保証する認証枠組みの構築が期待される」と提言している。
金融庁は近く、有識者会議を開く。報告書を取りまとめ、政策に具体的に落とし込む考えだ。
石炭火力向け撤退鮮明に
3大銀行グループが脱炭素に向けた施策を拡充している。2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目標地点とし、ロードマップと具体策を明確化した。20年度に開始した計画を早くも上方修正した例も目立つ。企業は気候温暖化に伴う事業リスク、脱炭素に向かう過程での多額投資などに直面し、金融機関の伴走が不可欠になる。同時に金融機関自らの“走力”も問われる。
「社会が持続可能であってはじめて三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が成長できる」。亀沢宏規社長は、持続可能な社会の実現の推進力になることが自社の存在意義だとする「MUFG Way」を説く。50年までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにする意欲的な目標と合わせ、21年度に策定した。
社会の持続可能性と自社の成長を両にらみするのは、どの企業にも通じる普遍的なものになった。環境負荷の高い企業が許容される度合いは狭まり、その時間軸は早まっている。3グループは30年に向け、顧客企業のESG(環境・社会・企業統治)経営を支える投融資を上積む計画を相次ぎ策定した。
50年までの気候変動対策の長期計画を立てた三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、まず20―29年度に30兆円(20年度の当初計画は環境関連で10兆円)を実行する。MUFGは、19―30年度までに35兆円(19年度の当初計画は20兆円)を目指す。また、みずほFGは、同期間に25兆円を投融資する。
ESG投融資を拡大する一方、石炭火力発電の投資撤退(ダイベストメント)方針を鮮明にしている。例えばみずほFGは、石炭火力発電所向けの与信残高の削減を加速する。残高ゼロの完了時期を40年度までとし、当初目標から10年前倒した。石炭採掘についても厳格化し、新規の一般炭採掘を資金使途とする投融資を停止する。
施策を着実に実行する内部体制も強化する。三井住友FGのグループCSuO(最高サステナビリティー責任者)など新職の設置や、関連部門の新設・拡充だ。MUFGは役員報酬に外部ESG評価を反映させる。
国内中小企業向けのESG投融資は拡充の具体方針はあまり聞こえてこない。積極的な対応が待たれる。