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【ディープテックを追え】電動義足が開く未来、「全ての人に移動の自由を」

#3 BionicM

「義足ユーザーができないことを減らしたい」。そう語るのは、ロボティクス技術を応用した電動義足「パワード義足」を開発するBionicM(東京都文京区)の孫小軍社長。義足ユーザーでもある孫社長は、義足を人間の足の動きに近づけられるよう難題に挑んでいる。

創業したのは2018年。孫社長が訪日して日本の義足を装着した際に「義足の機能はまだまだ良くなる」と感じ、起業を決意した。

孫社長

パワード義足は下肢切断者の歩行をアシストするものだ。今までは義足自体には歩行する力はなく、人間が歩行する力を利用して義足をコントロールしていた。そのため、つまずきなどを起こすと義足の膝関節部品が折れ曲がる「膝折れ」や義足が床から離れる際に、かかとが立ってしまう「伸び上がり歩行」が起こってしまう。階段の上り下りなどの日常的な動作に大きな負担感を与え、疲れやすくなってしまうのも難点だった。孫社長は「足で例えるなら、今までの義足は骨と関節しかないため不都合が生じていた」と話す。

足で例えるなら筋肉

パワード義足の実際の動き

そこで同社のパワード義足は「筋肉」にあたる電動部分を強化した。装着するユーザーの歩行や立ち上がるといった動きをセンサーが感知。センサーは関節の角度や義足の傾きを感知し、電動部分にあたるモーターを制御する。階段を上るような負荷が大きい動作だけではなく、細かい歩幅など多様な動きに対応できるようになった。座っている場合は、電力消費を抑制。同社によると1回の充電で2万歩使用できるという。また、電力が切れた場合もアシスト部分が機能しなくなるだけで、通常の義足同様の使い方はできる。

特にこだわったのは、自然にユーザーになじむ設計だ。義足の重さは2.8kgほどで、人間の足の重さ3kgと大差がない。また、義足という限られたスペースに前述の高度な制御システムを搭載するため、内蔵したセンサーやモーターは独自に開発したものも少なくない。そのため、1つ数十万ほどするセンサーも使用しているため、大幅なコストダウンは難しいという。それでも、孫社長は「今はコストダウンよりも良い製品を作ることに注力したい。ユーザーが使いたいと思うものを作る」と語る。 同社はこの義足を21年中に販売を予定する。価格は300万円ほどで、従来の電動義足よりも価格を3分の1以下に抑えた。

将来的には歩行以外もサポート

機能の拡充に加え、高齢者の歩行支援も検討する

今後も製品のバージョンアップを目指す。1つは様々な場面で使えるように安全性を高めることだ。例えば、スポーツや登山などのアウトドアにも1つの義足で対応できるようにしていくこと。市場に投入する義足は日常生活の歩行や近距離の移動を想定しているため、耐久性の向上も重要な要素だ。

また、将来的には下肢切断者だけの利用だけではなく、近距離移動が難しくなった高齢者などの歩行支援などにも応用範囲を広げたい考えだ。同社のミッションは「全ての人の移動を快適に、よりスマートにすること」。人が自由に移動できる未来を見据えて取り組みは続く。

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ニュースイッチオリジナル
小林健人
小林健人 KobayashiKento 第一産業部 記者
今回は電動義足を開発するBionicMについて取材しました。孫社長が歩いている姿を拝見しましたが、非常にスムーズで驚きました。また、製品が「攻殻機動隊」の世界みたいでかっこいいと思ったのも印象に残っています。同社の技術発展は義足の範囲にとどまらず、身体の衰えを補完するなど様々な用途に使える可能性があります。

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