“脱炭素”で活況の風力発電業界、それでも「時間との勝負」のワケ
風力発電が新たなビジネスチャンスを生み出しつつある。JFEホールディングス(HD)の柿木厚司社長は「世界的需要や技術の進展は、想定より速い可能性がある。時間との勝負」と意を強くする。装置メーカーなどと組むほか、2年以内のM&A(合併・買収)も視野に入れる。
同社は洋上風力発電を柱とする再生可能エネルギー分野を今後の成長戦略に据え、鋼材供給から加工、装置の設置、保守まで一貫受注を目指す。35%出資するジャパンマリンユナイテッド(横浜市西区)では、12メガワット級の風車の搭載にも対応した浮体式洋上風力発電向けのセミサブ型浮体デザインも開発した。
風力発電は建設工事が大規模になりがち。特に洋上風力ともなると、その管理が重要となる。ルッドリフティングジャパン(大阪市西区)は、風力発電のブレード(羽根)のつり作業で使われる、各種クレーンなどに取り付けるつり金具に無線識別(RFID)チップを標準装備し、製品情報を一元管理できるサービスを始めた。同社が扱う約1000点の金具全製品が対象。平松修社長は「風力発電、洋上風力発電などの施工現場で欠かせない」と話す。
安定的な稼働には、適切な保守管理が欠かせない。NTNは風力発電設備の状態監視システムを2012年から展開し、累計200件以上の納入実績がある。センサーで収集した主軸受、増速機、発電機の振動データを解析し、異常兆候を早期に検出する。特に洋上は、陸上に比べて現場へのアクセスやメンテナンスが難しく、発電装置にはより正確な状態監視システムが求められると想定。同システムの検知精度を向上しつつ、新機能・サービスも加えて、補修部品の需要まで取り込みたい考えだ。27年3月期には同システムと関連サービスで売上高10億円を目指す。
自律制御システム研究所は自社開発の飛行ロボット(ドローン)を用いて、風力発電機のブレードを自律飛行点検する実証実験を20年11月に実施。通常の、望遠レンズを用いて地上から撮影するやり方より大幅時間短縮できることを証明した。
風力発電機は山あいや沖合など、交通が不便な場所に立地する。複数枚あるブレードの全部を地上から撮影するには風力発電機をいったん停止し、ブレードの角度を変えながら行う必要がある。1枚に2―3時間かかり、すべてのブレードの撮影にはその数倍の時間がかかることが課題だった。同社のドローンでは風力発電機の詳細サイズ、位置情報を入力するだけで自動的に飛行ルートを算出、発電機の塔やブレードに沿って飛行し撮影する。セキュリティーの面から国産ドローンであることもアピールする。