「脱炭素」は資源調達リスクと表裏一体!EVや風力発電の原材料市場で高まる中国の存在感
レアアースで早くも中国に存在感
脱炭素化に向けて需要拡大が見込まれる電気自動車(EV)や風力発電などの分野で、資源の獲得競争が熱を帯びている。モーター用磁石に使うレアアースの確保をめぐり米中相互が牽制(けんせい)を強める一方、電池材に使うニッケルの最大産地のインドネシアでは製錬や電池の工場建設計画が相次ぐ。主要国は、環境インフラなどに大規模な財政出動を計画し、原材料需要の増加も期待されるが、足元では資源の囲い込みによる調達リスクも高まってきている。
欧州連合(EU)や中国、日本がカーボンニュートラルを長期目標に掲げたのに続き、1月に米バイデン新政権がパリ協定への復帰手続きを開始し、主要国の脱炭素化への足並みがそろった。各国は、コロナ禍で停滞した経済を環境投資で立て直す「グリーン・リカバリー」に舵(かじ)を切り、関連製品に使われる金属資源の需要増加が見込まれている。
EVでは銅やアルミニウムのほか、リチウムイオン電池の正極材にニッケルなどが使われる。当面は「ニッケル容量が少ない電池を搭載するハイブリッド車(HV)の伸びが想定される」(国内非鉄大手)が、欧州主要国は2030年代にHVの新規販売禁止を目標に掲げるなど、長期的にはEVシフトが一段と進む見通しだ。
また、風力発電機にも使うモーター用磁石にはレアアース、太陽光発電の電極には銀、燃料電池の触媒にはプラチナと、再生可能エネルギー分野でも金属が重要な原材料となる。エネルギーの需給構造の転換には長い時間を要するが、中長期の需要底上げ期待は高まっている。
一方、供給面では、EVや風力発電の原材料市場で中国が早くも存在感を発揮している。中国政府は1月に、鉱石生産シェアで約6割を占めるレアアースについて輸出入業者などを対象とする管理規制案を公表。ニッケル鉱石シェアで3割を占めるインドネシアでは、現地国営企業と中国メーカーとの間で電池工場の建設計画が浮上している。
日本はレアアース輸入の約6割を中国に依存しており、「中国の輸出規制が強まれば、他国からの調達競争が激化する」(国内商社)と市中の警戒感は強い。米国は豪レアアース大手を国内に誘致して生産力の増強を急ぐなど、脱炭素化に向けて供給網の再編が始まっている。