JX金属、半導体スパッタ材の増産を半年前倒しする狙い
JX金属は磯原工場(茨城県北茨城市)で計画している半導体向けスパッタリングターゲット材の増産計画を2021年秋に半年前倒す。当初は22年春から新しい製造設備を順次稼働する予定だった。第5世代通信(5G)の進展など、特に銅・銅合金ターゲット材を用いた先端半導体の需要が拡大しており対応する。
磯原工場の既存建屋内にまず銅・銅合金スパッタ材の製造設備を導入する。半導体の回路線幅の微細化を進めるには、銅配線が不可欠で銅・銅合金のスパッタ材が必要。JX金属の中で比較的数量が多い銅・銅合金だけでなく各種スパッタ材の増産を前倒す。
スパッタリングターゲット材は半導体製造工程で使う薄膜成形材。主に最先端のロジック(理論素子)やメモリー(記憶素子)の微細配線材料として用いる。JX金属が世界シェア6割を握る。同社グループの長期ビジョンで「フォーカス事業」と位置付ける先端素材分野の中核材料だ。
テレワークなどを背景とした通信インフラやモバイル端末の需要拡大で、半導体市場の成長が加速し、5Gやデジタル変革(DX)の進展でこの流れが続くとみられる。
JX金属は旺盛な需要に対応すべく、磯原工場の生産能力を17年比3割増強することを18年に決め、増産体制構築に着手した。さらに20年に、磯原工場を含む国内外で総額120億円の増産投資を決定。銅・銅合金、チタン、タンタルなどのスパッタ材製造設備は22年春以降に順次稼働する計画だった。
日刊工業新聞2021年5月26日