JX金属が戦略投資を加速、「先端素材で差別化」の狙い
JX金属はデータ社会の到来により拡大する先端素材の需要拡大に対応し、提携戦略(アライアンス)を加速させる。7月に策定した2020―22年度中期経営計画の切り札となるのが、成長戦略のコアに位置付けた「フォーカス事業」だ。技術による差別化をキーワードに、革新的な電子デバイスに不可欠な先端素材に力を注ぐ。村山誠一社長に今後のアライアンスについて聞いた。(山下絵梨)
―戦略投資の拡充を盛り込んだ中期経営計画を策定しました。
「19年に公表した『2040年JX金属グループ長期ビジョン』の実現に向け、技術立脚型企業への転身の種まきの期間に位置付けて中計を策定した。基本方針は戦略投資の拡充、技術開発の促進、事業ポートフォリオの見直し、付加価値創出型人材育成が柱だ。(6月のJXTGグループから)ENEOSへの経営体制の変更を機に、従来以上の自律性、機動性、独立性を高めた企業運営を行う」
―3年間の投資3000億円のうち、戦略投資に1600億円を投じます。
「戦略投資のうち、950億円は次期中計の23年度以降の効果発現に向けた投資だ。具体的には技術開発の戦略投資として500億円、既存事業に450億円を投じる。技術立脚型企業へのシフトへの実現に向けて、M&A(合併・買収)投資やベンチャー投資による効果、機能材や薄膜材の拡販効果を対象にしている」
―事業間連携がカギとなります。
「外部とのアライアンスは成長戦略のコアとなるフォーカス事業で大々的にやっていく。急増する通信インフラやデバイス需要を取り込み、成長を加速させたい。当該分野に用いる先端素材の機能材料事業や薄膜材料事業、タンタル・ニオブ事業などに注力する。これら事業群がそれぞれシナジーを追求し、新しい研究開発を行うやり方も一つだ」
―ほかのアライアンスはいかがですか。
「スタートアップとの提携やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の協業も積極的にやりたい。生産能力の増強など既存事業の収益拡大のみならず、将来を見据えた新規事業の大幅な拡充を目指す。ただ、ベース事業の資源や製錬については、アライアンスよりも既存事業の最大活用や最大効率化を目指すことが最優先だ」
チェックポイント/テレワーク・5G普及、商機
JX金属の村山社長はフォーカス事業でアライアンスを積極的に展開する考えだ。新型コロナウイルスの影響で、20年度の事業環境は厳しいものと予想される。一方で、21年度以降の電子デバイス市場の回復を見据え、フォーカス事業に注力する。テレワークや第5世代通信(5G)の普及で電子デバイスの市場拡大が見込まれる。データ社会の到来に伴い拡大する需要を確実に取り込むためにも、外部とのアライアンスがカギとなりそうだ。