高周波電流で低い環境負荷、ネツレンの誘導加熱技術が「EV社会」の追い風に
IH技術でEV軽量化
【長期ビジョン】ネツレンは約75年前に誘導加熱(IH)技術の工業化で創業した。高周波電流による熱処理で環境負荷が少ない技術だけに、持続可能な社会づくりとは切り離せない。2021年春に策定する30年度までの長期のビジョンで、二酸化炭素(CO2)排出削減など、国連の持続可能な開発目標(SDGs)への対応を中核に据える。
【環境で開発魂】「SDGs17目標のうち、産業と技術革新の基盤、住み続けられるまちづくり、気候変動への対策という三つは、当社の進むべき方向性と重なる」。20年10月に就任した大宮克己社長は、長期ビジョンと第15次中期経営計画(21―23年度)の策定への思いを語る。
IH技術は電気を使うため金属の加熱効率が高く、CO2の直接的排出はない。「焼き入れ」「焼き戻し」などの処理で硬さや耐久性、耐摩耗性を持ち、省資源にもつながる。
主要顧客は自動車、土木・建築、建設機械・工作機械の3領域と幅広い。IHを使う加工・製造が全事業の大半で、環境対応の開発魂が成長の源泉。自動車の軽量化などに寄与する高強度バネ鋼線「ITW」、素材の使用を削減する部分高強度鉄筋「ダブルスターク」などを生み出した。
【ブレない方針】現在拡販するのが自動車操舵(そうだ)装置用部品「ハイブリッドラックバー」。冷間逐次成形で加工された中空ラックバーと、中実(中空ではない)丸材を摩擦圧接。高い機能を保ちつつ、部分ごとに強度と重量を変えたのがポイントだ。
デュアルピニオン式電動パワステ用では、不可能とされてきた軽量化に成功。19年に市場投入を始め、超モノづくり部品大賞モビリティー関連部品賞も受賞した。今後の車両電動化や自動運転化にも寄与する見込み。
海外6カ国にも拠点を持つ同社の19年度末時点の取得特許は841件、19年度の研究開発費は約10億円。開発力に磨きをかけるため“人財”の確保と育成に注力する。一時停滞した新技術・製品の育成は復活しつつあり、「環境負荷の低減」というブレない方針を軸に一層の飛躍を図る。