新型コロナのワクチン接種にLINEのシステム活用する大阪府の狙い
コロナ禍でデジタル化の遅れが浮き彫りとなる中、大阪府は矢継ぎ早に情報通信技術(ICT)を活用した独自システムを導入している。2020年投入の「大阪コロナ追跡システム」に始まり、21年1月には手軽に新型コロナウイルス感染症の検査が申し込める「スマホ検査センター」を設置。3月に始まる医療従事者へのワクチン接種にもLINEのシステムを活用する計画だ。コロナ禍で行政にはかつてないスピード感が要求されている。
「この中でLINEを使っている人」。ワクチン接種にLINEの予約システムを活用する理由を問われ、吉村洋文知事は報道陣へこう問いかけた。総務省の調べでは19年の国内LINE利用率は86・9%。会見場にいるほとんどの人が手を挙げ、知事は「これが理由です」と説明した。
普及済みのツールを活用し、必要な人へいかに迅速にサービスを届けるか。府は3月上旬から府内の医療従事者へ6週間以内にワクチン接種する計画を掲げるが、191機関で接種を予定する14万人の接種日時の予約ツールとして普及率の高いLINEを選んだ。
府が一括管理するワクチン配送センターの超低温冷凍庫から、予約状況に応じてワクチンが医療機関へ届けられる仕組みだ。
大阪府・市ではコロナ禍以前からICT化に力を入れてきたものの、20年の特別定額給付金の給付作業では、処理システムの稼働遅れにより大阪市が他の自治体より支給が遅れるなどの準備不足が露呈した。「情報が不確定な中だが、(ワクチンが)来る前から(提供体制を)考えようと進めている」(吉村知事)背景にはこうした事情もありそうだ。
感染者と接触した可能性のある人を追跡できる「大阪コロナ追跡システム」には2月時点で約8万カ所の事業所が登録。利用者はスマートフォン保持者に限られるものの「できるだけ多くの人が使えるなら、それはやろうという発想で進める」(同)と割り切る。
高齢者施設関係者が利用できる「スマホ検査センター」も「スマホ一本で」(同)サービスを完結させることにこだわった。最短で翌日に検査結果がわかるスピード感だ。刻々と感染状況が変化する中、必要なサービスを適切なタイミングで届けるための見極めはますます重要になっている。システム構築と使い勝手の両面で、行政にはこれまで以上に速さが求められることとなりそうだ。