「高揚感と心の豊かさを」。高島屋社長が描く百貨店の進歩
―緊急事態宣言が再発出され、首都圏の店舗は時短営業になりました。新型コロナウイルスの影響はいつ頃まで続くとみていますか。
「今春には年度を短く設定した中期経営計画を発表する予定だが、その期間に2019年度レベルの業績に戻したい。新型コロナの収束には最低でも2―3年はかかるだろう」
―コロナ禍の中、電子商取引(EC)は伸長しています。さらに伸ばすにはどうしますか。
「もともと自家需要品のEC分野は強く、歳暮などシーズンギフトもリアルからネットへシフトしている。今回のバレンタインギフトでは、気になるブランドのチョコレートを1粒ずつ購入できるようにした。パーソナルなニーズに応えられるネット環境をより一層整備する」
―イベントがない通常時のECは、他社とどう差別化しますか。
「服飾メーカーなど既存の取引先との在庫連携を拡大する。ある取引先とは連携して、わが社と取引先のどちらのホームページからでも商品を購入できるようにしたところ、お客さまの購買単価が上がった。商品が購入された側に送客手数料を払う仕組みだ。お客さまにとっても買い逃しがなく利便性が向上する。これらの取り組みにより、23年度に300億円としていたECの売上高を前倒しして500億円に引き上げる」
―近年は、百貨店本体より、テナントが入る商業施設開発に力点を置いているようにみえます。
「核になるのは百貨店の高島屋だ。品ぞろえはもちろん、来店されるお客さまは商業集積空間の中での高揚感などを求めており、これらは実店舗というリアル空間でしか提供できない。今後も百貨店事業を核にして複合的な施設を展開する。決して『脱百貨店』ではない。子会社の東神開発が手がけた、流山おおたかの森ショッピングセンターも百貨店があるから著名なブランドを集積できた。専門店にはできない。百貨店というブランドがあるからできる。東神開発はコロナ禍でも需要がある都内近郊のオフィスビル開発、海外ではベトナムを中心に学校や商業が入る複合施設の開発を進める」
記者の目/次世代百貨店の構築を
インタビュー中、村田善郎社長からは「売り場の編集力、ワンストップサービス、文化的催事、知的欲求を満たす場を充実させて、お客さまの高揚感、心の豊かさを提供できる百貨店になる」との言葉が何度か出た。これが本心なのだろう。百貨店らしさの再徹底と、ECなどデジタルを駆使した次世代百貨店の構築が始まる。(編集委員・丸山美和)