除菌だけじゃない!パナソニックが小田急百貨店に安心ゲートを置いた真の狙い
パナソニックと小田急百貨店が非接触で測温を行いながら、手指と足元の除菌ができる「安心ゲート」の実証実験を10月末から小田急百貨店新宿店(東京都新宿区)で始めた。百貨店との実証実験は現時点では2021年2月末までを予定。安心ゲートには除菌機能だけでなく、データ収集機能も備わっている。パナソニックの担当者は「『新宿』という日本の中でもコロナの影響が最も大きかったエリアで検証を行い、一つのロールモデルを作れたら」と話す。将来は安心ゲートから取得した店舗の混雑状況や人の属性データを駅の人流データなどと組み合わせ、街が混雑していない時間帯や、人通りの少ないルートを来訪者に提示し、安心安全な暮らしに貢献する「ソリューション」を提供する考えだ。
安心ゲートは小田急百貨店新宿店の中央口、モザイク通り口、カリヨン北口の3か所に設置されている。ゲート1台につき、一度に2人の利用が可能だ。時間帯にもよるが約半数の人が立ち止まり、安心ゲートを利用している。
白を基調とした安心ゲートの外見は、洗面台に似ている。台の上には、手指除菌を行える非接触スプレーと、足元除菌ミストを開始するための非接触センサー。鏡の位置には測温できるディスプレイが配置されており、説明されなくても使い方がわかるような形状だ。
利用者が安心ゲートに備えられたディスプレイの50㎝圏内に近づくと、カメラで顔の位置が検出され、表面温度が測定される。マスクをしていない場合は、マスク着用を促すアラートも出る。体温を確認しつつ、非接触で手指除菌と足元除菌を行う。
手指の除菌はコロナ禍で一般的だが、足元除菌は珍しい。安心ゲートの台の上にあるセンサーに手をかざすと、足元めがけて微細なミスト状の電解除菌水が5秒間噴射される。
足元除菌のミストには、今夏延期になった東京五輪・パラリンピック用に開発したパナソニックのミスト式冷却機「グリーンエアコン」のコア技術を活かした。噴霧時はミスト上なのに足元が「びしょ濡れにならない」。髪の毛や霧よりも細かい10マイクロ以下のミストは、すぐに気体になるため、服や靴を濡らさずに除菌できる。
足元除菌機能についてパナソニックの担当者は「菌は下にたまっていく傾向にあるため、足元もきれいにする方がよりよいのではないかという仮説に基づいて検証をしている。一般的な細菌には効果があるというのはエビデンスとして出ている。コロナウイルスでも検証できたら」と語った。
しかし、実証実験をする中で、見慣れないためか「足元除菌に気づいてもらえない」課題も見えてきた。今後はいかに足元除菌に気づいてもらうかを検討し、ゆくゆくは習慣として根付かせていきたいとした。
小田急百貨店新宿店の担当者は「外商のお得意様からは、『きちっとしたものがついて安心できる』というお褒めの言葉を数件ですがいただいている。当社としてはまず、安全対策をしているお店なんだということを顧客に印象付けられれば嬉しい」と安心ゲートについて話している。
「安心ゲート」は足元除菌機能が目を引くが、それだけではない。安心ゲート上部には小型のカメラが設置されており、店舗の混雑状況や、来訪者の性別や年齢などの属性傾向データを収集している。
将来的には安心ゲートから収集したデータと、様々な施設や鉄道などの混雑状況データを組み合わせ、来訪者に密を回避するための場所、時間帯、ルートなどの情報を提供し、安心な移動を実現したいとのこと。
パナソニックの担当者は「小田急百貨店との協業からスタートしたが、色々な方と協業することで、点ではなく生活圏という面のソリューションを提供したい」と希望をにじませた。
現在行っている2021年2月末までの実証実験は、収集したデータをいかに活かせるかを検討する段階。実際に来訪者に混雑状況などを提示するソリューションを提供するのは来春以降を検討しているという。来訪者にいかに混雑状況を提示するのかも、サイネージ型、アプリ型など、ソリューションを利用する人に合わせて考え、試行錯誤している。