温室効果ガス排出量が多い化学業界、三井化学はどうカーボンニュートラルを目指す?
―2021年の事業運営のポイントは。
「当社はモビリティー関連ビジネスが大きく、20年の事業環境は厳しかった。市場は20年4月を底に戻ってきたが、19年上期水準への回復は時間を要する。過去に投資したモビリティーやフード&パッケージング分野の新設備をきっちり立ち上げて投資を回収する。社会変化を予測し、対応して、飛躍の年にしたい」
―50年にカーボンニュートラル達成を目指すと宣言しました。
「欧州の意識も高くグローバル全体で環境対応へドライブがかかる。二酸化炭素からのメタノール生産のように、昔は収益性が難しく進まなかった環境技術の開発も、外部との連携で完成させる好機にしたい。環境に貢献する『ブルーバリュー』製品群の利用拡大や原燃料転換、再生可能エネルギー利用を組み合わせ、カーボンニュートラルを目指す」
―投資やM&A(合併・買収)の方針は。
「新型コロナウイルス感染拡大で、衛生について考え方が変わってきた。ここ数年少なかったヘルスケア分野への投資を積極化する。M&Aは常にリストを見て進めており、コロナ後も本州化学工業やDIC化工の事業買収などを行った。必要な案件は実行する」
―ICT市場拡大にどう対応しますか。
「スマートフォン用カメラレンズ材料の『アペル』は22年春の稼働を目指して設備増強工事を進め、顧客の要請に応えられる。半導体製造工程テープ『イクロステープ』の台湾拠点はフル生産で、次の増設を検討する」
―収益の変動幅の大きい基盤素材の事業基盤強化が課題です。
「ROIC(投下資本利益率)と市場シェアで各製品の競争力を精査し、両方とも低い製品はコスト削減や他社との連携を通じて強化する。3年以内にめどを付ける。ただ、原料から樹脂、成長製品まで生産品目はつながっており、チェーン全体でも見ていく」
―長期ビジョン策定の進捗(しんちょく)は。
「若手からの案を土台に、今は役員中心に会社の在り方を含めて議論し、内容は煮詰まってきた。特に社会貢献の意識が強くなったと感じる。サステナビリティーを最優先事項とし、経営にあたる」
記者の目/業界内・異業種との連携期待
三井化学は国内の化学系企業の中で、早い段階でカーボンニュートラルを目指すと宣言した。事業の特徴上、化学業界の温室効果ガス排出量は多く、三井化学の排出量は日立製作所やデンソーを上回っている。達成には二酸化炭素の資源利用をはじめ、多くの技術革新が必要で、宣言を機に業界内や異業種の連携を推進する役割も期待したい。(梶原洵子)