業績悪化の化学大手、「4-6月期が底」は本当か
総合化学6社の2020年4―6月期連結決算が出そろい、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、3社が営業減益、3社が営業赤字となった。自動車分野など多くの産業分野での需要鈍化やナフサ価格下落に伴う在庫評価損の発生、市況低迷が響いた。先行き不透明感は続くが、各社は4―6月を底に上期から下期にかけて回復を予想する。
三井化学が13日発表した20年4―6月期連結決算(国際会計基準)は、営業、税引き前、当期損益が赤字となった。主な要因は汎用石化製品などの「基盤素材」部門の落ち込みで、在庫評価損やプラントの定期修理費用が同部門に集中した。
あわせて、同社は21年3月期業績見通しを上方修正した。オムツやマスク、医療用ガウン向け不織布の販売増加と、石化製品の交易条件の改善を見込む。同社は5月に通期のナフサ価格をキロリットル当たり2万3300円とかなり厳しめに予想していたが、足元の状況を踏まえ同2万8750円に修正した。
新型コロナやナフサ価格下落の影響で各社ともに厳しい決算となった。各社の汎用石化関連事業は営業赤字となった。全社に占める石化比率や定修、新型コロナ影響で販売が増加した製品の有無で減益幅に差が出た。
旭化成は「ヘルスケア」と「住宅」部門が増益となり、全体の減益幅を比較的に小さく抑えた。人工呼吸器の販売増加や、19年度に予定していた住宅引き渡しが20年4―6月にずれ込んだことが寄与した。三菱ケミカルホールディングス(HD)は石化製品などの「ケミカルズ」部門のコア営業損益が赤字となり、「機能商品」や「産業ガス」も減益となった。住友化学は健康・農業関連の損益が回復してきたが、石化部門のコア営業損益が赤字となり、大幅営業減益となった。
一方、同4―6月に営業赤字となった企業は、各社個別の要因も業績を押し下げた。東ソーは四日市事業所(三重県四日市市)で大規模な定修によって、石化製品の販売減と費用増加が発生。宇部興産はナイロン原料のカプロラクタムの利ザヤ縮小が響いた。
各社は4―6月期を底に、市場環境は改善に向かうと予想する。またナフサ価格の下落に伴う在庫評価損がなくなり、定修が明けて生産が回復することも、下期の業績回復に寄与する。
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