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内定得た就活生たちが総括する「オンライン面接」の有利不利。対面との違いをどう克服?

就活座談会 前編

新型コロナウイルスの感染拡大でこれまでとは大きく変わった2020年の就活事情。相次ぐ合同セミナーの中止やオンライン面接の拡大など、学生側だけでなく採用する企業側も手探りで、双方が苦慮した。今回、内定を得られた21年3月卒予定の大学4年生たち6人に集まってもらい、異例の就活事情を“ホンネ”で語ってもらった。彼らが実際に乗り越えてきた21卒の就活の実態とは-。

コロナになって、むしろ落ち着いた?

佐藤(司会を兼務。仮名、以下同じ):4月の頭から首都圏で緊急事態宣言が発令されるほど、コロナの影響はひどくなっていったよね。就活の時期と被ったけど、どうだった?

川内:私の場合、逆に焦らなくて済んだ。いつもならこの時期はこれをやってなきゃ!という世間のタイムスケジュールみたいものが無意味になったから。

高野:僕は焦ったというより、就活の期間が延びるのがとにかく嫌だった。夏前に早く終わらせたくてセミナーなどに参加したのに、無駄だったのかなって思ってしまった。

大島:業界にもよるけど、早期選考で動いた子はコロナに入る前に最終面接という企業もあった。不動産系を見てた僕の友達は、もう2月に内定が出ていて...。「あとはあなたの内定を待つだけだね」って言われた(笑)。僕は内定どころかエントリーシートの返事をもらうところだよ(笑)。

杉田:私が10日間のインターンで働いた企業は選考が早かった。去年の12月にもう最終面接あって。ただ、内定はもらったけど、お断りしました。

川内:コロナによって大きく影響を受けたのは、航空とか、観光業界目指してた人たちだった。知り合いで、CAになるための学校に通ってたけど、「コロナで選考が厳しい」って私の大学に中途で入学してきた子もいた。

コロナで企業の違いが垣間見える

大島:今回のコロナで企業の違いが見えたなと思った。いかに早くオンラインに切り替えられるかとか。制度にがんじがらめになっている企業は早く動けないから止まってしまって、その分就活生も離れていくだろうし。だけどオンラインで説明会したり、インターンしたりと早めに切り替えられた企業は、多分実際にその企業で働いても、いろいろなことに対応できるんだろうなって思った。

佐藤:実際にそういう経験があった?

大島:企業側も、いつはじめていいのかとか、対面にするのかオンラインにするのかとか、ハッキリと言えないのは分かっている。でも、それを説明してくれる企業とそうでない企業があった。やっぱり理由が分かっている方が「企業側も大変だよね」って思えるけど、放置されたままだと、「本当に私を採る気あるの?」って思っちゃう。同じ待たされるでも気持ちが違った。

川内:確かに「何日までに連絡します」って言ってくれる企業は安心できた。

高野:僕は企業の人にリクルーターとして付いてもらっていたから、その人とやり取りすることで企業の状況を知ることができた。すごく正直にその企業のことを教えてくれて、ありがたかった。補填のような感じで、ウェブセミナーで事業内容をより詳しく教えてくれた。忙しいのは分かるのだけど、待っている人への対応はしっかりしてほしいな。

大島「コロナに合わせた対応を素早くとれる企業は入社しても安心かもしれない」

コロナによって進路が変わった人も

佐藤:新型コロナの流行拡大の影響で志望する企業や業界が変わったりした?

川内:私はもともと文芸系の出版社を目指してたけど、コロナになって選考が止まってしまって...。自己分析をより深くして、他の企業を見始めたことで、来春から働く企業に出会えた。あと、オンライン説明会ではなくて、対面で説明会をやった企業が逆に印象的だった。実際に来てみて、話を聞いて、面白いなって思えた。

松本:安定志向にシフトしたかも。推薦を使って内定をもらえたけど、実はそれ以上に行きたい企業もあった。でも、推薦を使って内定をもらえる企業は1つだけ。第一志望はコロナで選考が先送りになっていたし、採用が狭き門だったから。事業の安定性もあったし、4月の終わりの早い時期に内定をくれた企業に行くことにした。

就活中のSNSは病みやすいので、使い方にはご注意

佐藤:私は匿名の掲示板とかSNSで「21卒」で検索して、すごくしんどくなった。

松本:よせばいいのに(笑)僕は、心を乱さないために21卒向けの就活支援サイトに飛ぶウェブ広告も見られないようにブロックしたよ。

杉田:SNSは病むから使い方に気を付けた方がいいよね。

オンデマンド式の説明会は就活生にとってはありがたい

佐藤:対面の説明会とオンラインの説明会、どっちにも参加した人が多かったと思うんだけど、それぞれどう思った?

川内:印象に残ったのは対面だった。そのあとに内定先はYouTubeでオンラインの説明会もやってくれて、何度か見直すことができた。自分にとってはすごくよかった。どっちもやってくれると最高だな。

松本:オンデマンド式の説明会って自分で何度も巻き戻せて便利だよね。人事の人が大事なこと言ったなって思ったら、巻き戻してメモできたり。生放送のパネルディスカッションだと進行が速すぎたりするからね。

高野:オンラインだと移動費などが安く済んだ。移動の時間を取られないのも嬉しかった。もし普通に就活してたら、説明会やインターンがあるからゼミや講義をたくさん休まなくちゃいけなかった。映像で自分のタイミングで見られるとなると、授業にも出られるし、それが終わったらすぐに就活に移ることができるし、だいぶ楽だった。

佐藤:企業に合わせるんじゃなくて、自分のペースに合わせることができるのはよかったよね。

松本:エントリーシートを書くために見る、というのもあった。服装もわざわざリクルートスーツに着替える必要もなくて楽だった。

杉田:対面のデメリットは時間を持っていかれることだけど、メリットは就活に対する意識を作ることができことかな。

大島:企業の雰囲気を感じられるよね。部屋に案内されるまでに、社員さんたちの働いてる様子とかも見えて、企業の空気も伝わる。オンラインでの就活が続いていた時にそう思った。

杉田:私は対面の方が質問しやすかった。説明会が終わっても個々で聞きに行けるから。オンデマンドだと企業側からの一方通行になっちゃう。

松本:僕は、逆に対面の方が質問しにくかったかも。理系の場合、ほとんどが大学院に進学するので人数的に少ない学部4年生は大学院の2年生と同時期に就活する。だから対面だと先輩だらけで緊張しちゃって質問しにくい。

佐藤:私はどこに就職しようか迷うことはなかったから、対面の説明会の方がやる気が出る、とかはなくて。だから、説明会やワンデイインターンはオンラインでいい。実際にこっちが働きかける必要がある面接とかインターンとかだったら、ちゃんと対面でやらせてほしい。実際に会ってみたいし、それこそ職場の雰囲気も知りたいし。

佐藤「自分が働きかける必要がある面接やインターンは対面がうれしい」

オンライン上での意図せぬトラブルで、台無しになりたくない面接

佐藤:対面の面接とオンラインの面接、それぞれどう思った?

杉田:面接はやっぱり対面がいいな。オンライン面接であと15分もしたら始まるって時に企業側から連絡が来て、「すみません、システムトラブルで明日に順延できませんか」って言われて、気持ちが乱れた。コロナ禍初期ってこともあったし、社会的な目を気にしてって側面もあったかもしれないけど、そこまでしてオンラインでやるっていうなら、ソーシャルディスタンスを確保した場所とかも作って、対面でやってくれた方がよかったな。

高野:企業側からしたらオンラインは捌きやすいと思う。15分ごとに区切って、「はい次、はい次」ってできる。でも3、4次まであるような面接だと、1次2次ぐらいなら、効率面からすればオンラインでもいいのかな。受ける側からしたら「話をもっと聞いてよ」と思うけど、企業側からしたらやりやすいから、オンライン化が進むと思う。

佐藤:でも、就活生の本音としてはみんな対面がいいんだね?

一同:そうだね

大島:オンラインでは話してる途中で何回か通信が乱れて、「もう一度お願いします」ってなるのが嫌だった。

杉田:グループ面接をオンラインでやるとき、入ろうと思ったらチャットルームに入れなくて。あとで、個別に対応はしてくれたけど。オンライン面接を受けた友達は、相手の顔が映らなくてまともに話ができず、そのまま選考を落とされたと言ってた。こういったところのサポートができないんだったらオンラインにするべきじゃないかな。

佐藤:事務的だなって思ってた。私はIT系の企業の選考で、最終面接までオンラインでやったところがあって。「最終までオンラインか。私の何がわかるんだろう」って思った。オンラインだと人となりが絶対に伝わらないと思う。最終面接くらいは対面でやってほしい。

川内:私自身、オンラインは自分に合わないなと思っていたので、実はオンラインの面接を受けたことがなくて。対面を重視しますと宣言している企業しか受けなかった。

佐藤:オンライン面接ができる環境を作る手間もあるよね。静かで、それなりに整っていてとか。

大島:自分の部屋が窓から全然光が入らなくて、窓の大きい弟の部屋を借りて面接を受けたことがあるよ。

松本:僕は弟と部屋が一緒だから、この時間は入らないように頼んだり、机を動かして、雑誌を重ねた上に机を置いて、ちょうどいいアングルにしたりとかしたな。

オンライン面接で得をするのは誰?

杉田:みんながみんなそうやってちゃんと受けられると思わないでほしい。オンライン授業もそうだけど、その環境を確保できる人とできない人がいる。実際にアパートで一人暮らししている友達は、オンライン面接を受けていたら隣の部屋から壁を何度も叩かれたらしくて、仕方なく実家に帰っちゃった。

高野:地方在住で、パソコンを持っていて、電波状況が整ってる人、くらいじゃないとオンライン面接は喜んで受けられないのかもね。

松本:企業側も選考活動を始める前に、オンライン選考をちゃんと受けられる環境かどうかの確認を取った方がいいと思う。オンラインと対面を選択式にしたり。

佐藤:不利有利が生まれてしまうのはよくないよね。

大島:teamsとかzoomとか、企業によって使うソフトが違ったりして、それをわざわざ何度もインストールするのが面倒だった。

杉田:オンライン面接は、そこに至るまでに積み上げてきたものが、ちょっとしたトラブルとかでなくなってしまうのは個人的にはすごく嫌だな。対面で全部やってダメでした、なら、いろいろ振り返ることだってできると思うけど、そういうオンライン上でのトラブルがあったから落とされたのかなって思ってしまうとちょっとやりきれない。

後編へ続く(31日公開予定)
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