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曖昧なルールはもう嫌!現役女子大生が語る“リアル”な就活座談会

「解禁時期」「服装」「結婚」 彼女たちはどう考える?

就活を終えた女子大生が振り返る

某日ー。今年度の就職活動を終えた女子大生3人を招いて座談会を行った。専攻も、大学の環境も志望業界も異なる3人だが、就活中、彼女たちを悩ませたのは、就活の「曖昧さ」だったという。度々話題に上がる、「就活解禁の時期」「服装」など就活生はどう思っているのか?日刊工業新聞社デジタルメディア局のインターン、リカ(仮名)を司会に、就活のリアルな声を聞いた。そこから漏れてきたホンネとは・・・。

参加者プロフィール(いずれも仮名)
りんさん:都内の私立大学でメディア研究を行う文系女子。広告会社に内定。
あやかさん:都内の私立大学に通う、参加者で唯一のリケジョ。メーカーのSE職に内定。
ゆいさん:地方の公立大学に通う文系女子。航空業界に内定。約1年半、就活のために地方と都内を往復する日々を送っていた。
リカ:司会。日刊工業新聞社デジタルメディア局所属。マスコミを数社受けていた。同社への入社が決まっている。
参加者。左からゆいさん、りんさん、リカ、あやかさん。

就活は大学入学と共に始まっている?!

ー「3月1日に就活解禁」とは言われているものの、「2019年度は夏頃に選考が始まり、3月前には就活が終わっている」という人もいます。私が参加した説明会には大学1年生の姿も見られました。就活のスタート時期が曖昧な中、皆さんが就活に向けて動き始めたのはいつですか?

りん:大学3年生の夏に、1度だけ1Dayインターンシップに参加しましたが、業界を知るためにお試し感覚で受けていました。本腰を入れて動き始めたのは、「解禁」と言われている3月です。

あやか:私もまずは大学3年生の夏に3Daysのインターンシップに参加しました。本格的に就活を始めたのはその年の12月で、それ以降は短期インターンシップに数社参加しました。

ゆい:私も初めてインターンシップに参加したのは大学3年の夏で、計7日間のプログラムでした。その後は業界研究のために、志望業界以外の1Dayインターンシップにも参加しました。

ーやはり皆さんインターンシップに参加されていますね。インターンシップへの参加は、もはや必須なのでしょうか?

りん:確かに「インターンに行くべき」という空気感はありました。流れに身を任せて行ったとしても得られるものは当然あると思いますが、あまり興味のない業界・会社になんとなく行くなら、研究やサークル活動に熱中して、面接の時に言えるような強みをつくったほうが良いと思います。

ー数カ月~年単位のものもありますが、みなさんは参加しませんでしたか?

りん:私自身は、やりたいことや自分に合っていることが思い浮かばず、就活をどう進めるか迷っていました。兄弟がおらず、どのように就活を進めるべきかも分からなかったので、かなりの時間を割く長期インターンシップに参加するのは勇気が必要でした。

あやか:私はIT業界に絞って就活をしていましたが、普段どのような仕事をしているかイメージができませんでした。だから実際に会社に足を運んで、「企業が何をしているか」「企業の強み・弱み」を知るためにインターンシップに参加したのですが、短期でも十分な情報を得られると感じました。

行って損をしたインターンシップも

ーどんな内容のインターンシップであれば「行きたい」と感じますか?

りん:社員の方のお話を聞くだけ、という内容よりも実践的なワークがあった企業の方が充実感がありました。学校では体験できないことに魅力を感じます。

あやか:私は「事業内容を聞いたり、社員の方に質問をして疑問を解消する」という、多くの企業で行われているような基本的なプログラムの方が良かったです。

一方で、「行って損をしたな」と思ったインターンシップもありました。時期は3年生の冬頃で、「自分を見つめ直す」というテーマのもと、自己分析に取り組みました。多くの会社で採用活動が本格化してくる冬頃ならば、学生は既に自己分析をしたうえで、やりたいことや方向性も定まり、受ける会社も絞っているはずです。面接対策など、やるべきことは他にもあるのに、数日間無駄にした気分でした。結局その会社については深掘りできず、ES(エントリーシート)を書く際もインターンシップの内容は全く役に立ちませんでした。

「収穫の無いインターンには行きたくなかった」とあやかさん。

地方ならではの就活の悩みとは?

ーゆいさんはインターンシップ以外にも、就活のためにダブルスクールをしていたと聞きましたが…

ゆい:大学2年生の夏には、エアラインスクール(客室乗務員を目指す人のための学校)に通っていました。多くの人は大学3年生の夏頃から通い始めますが、私は地方の大学生ということもあり、「都内の学生と同時期に就活を始めては、遅れをとってしまうのではないか」と考え、大学2年生でも受け入れてくれるところを探して通っていました。

ー具体的には、どのような点に遅れや差を感じていましたか?

ゆい:就活に関する情報の量・質です。地方だと、空港もエアラインスクールも近くにないので、新鮮な情報を手に入れることができません。また、大企業でないと地方学生向けのセミナーも開催されないので、得られる情報量にも差があります。

地方と都市部ではモチベーションの差も問題だと思います。3月に「いよいよ就活解禁だ」と話題になる中、友人から「何が解禁したの?」と聞かれたこともありました。都内の企業を受けていた友人もいましたが、都内の学生と比べて動き出しが遅く、手遅れだと感じていました。

ー大学とスクールを往復するのは大変だったと思います。地方の学生が都心に就活しに行くときの悩みは何でしたか?

ゆい:一番はやはりお金。宿泊費を抑えるためにカプセルホテルに泊まったこともありました。交通手段は、高速バスを利用すればそこまでお金はかかりませんでしたが、道路状況次第では集合時間に間に合わない可能性もあるので、値は張りますが、仕方なく特急電車で向かったこともありました。

また、大学自体も就活に対して柔軟でなく、インターンシップによる欠席を公欠扱いにしてくれませんでした。学業と就活を両立したいとは思っていましたが、就活によって学業に支障が出ることは仕方がないのではないかと思います。

ゆいさんの就活は大学2年生の時から始まっていた。

ー大学が「早い時期から就活を始める人もいる」ということを想定していないようですね。もちろん人によって意識の差はあると思いますが、早くから動き始めたい人のために、大学側も配慮すべきですよね。

知らないと損をする?「就活ルール」の存在

ー就活を進めるうえで、「こうしておいた方が無難だ」という「暗黙の了解」があるように感じます。例えば、「説明会などで服装規定がなければ、スーツを着ていく方が無難である」というように。

ゆい:確かに服装に悩むことは多かったです。私は説明会や面接の際に「私服推奨」と言われることが嫌でした。このときの「私服」とは、カジュアル過ぎない、いわゆる「オフィスカジュアル」のことだと認識しています。私服に該当するものがなかったので、「就活用の私服」を数着買いました。いっそのこと「スーツで着てください」と言われたほうが楽でした。

ー私も「私服推奨」というメールが届いたので私服で向かったところ、8割ほどの参加者がスーツだったということがありました。もし自分の私服が目立ってしまったり、場に適していなかったらどうしようかと悩んだ結果、「スーツが無難だ」と考えるのでしょう。本当の意味での「自由」は、企業はもちろん、就活生の意識も変わらない限り難しいと思います。

「服装・髪型の自由」が進んでも、就活生は無難でいたい。

りん:私は就活の時期や期間について疑問に思うことがありました。「就活を早く始め、早く終える人ほど優秀」だと考える人が多い気がします。友人の中には、早いうちから長期インターンシップを始め、4月頃にはそこで内定が決まっている人もいたので、私も早く内定をもらわないと、と焦りました。

ゆい:私は面接の際にどの会社に対しても「第一志望です」と答えなければ内定がもらえない、という噂を聞きました。実際に、集団面接の際には全員が「第一志望です」と答えていたのに、面接後に話をしてみると「ここは第一志望ではない」と断言する人も多かったです。私は嘘をつけない性格なので、全ての企業に対して正直に「第〇志望です」と伝えていましたが、皆さんはどうしていましたか?

「第一志望なので・・・」

あやか:私もその噂を聞いたことがあります。私は第一志望でない企業に対しては「第一志望群」と、ぼかした言い方をしていましたし、第一志望の会社に対しては、本気度が伝わるように、人事の方に「第一志望なので…」と念押ししていました。

ゆい:やはり、正直に言うべきではなかったのでしょうか。エントリーシートをエアラインスクールの先生に添削してもらったときは、先生に内容を変えられて、話が大きくなってしまいました。話を盛りすぎていて、「これはもはや自分ではないな」と感じましたが、そこまでしないと人事の方の目に留まらないのでしょうか。

りん:私もゆいさんと同じで嘘をつけない性格です。最終選考のweb上の適性検査で落とされたことがあったのですが、「自分を偽って、企業側が求める人材に寄せた回答をすれば、受かっていたかもしれない」と思うと悔しかったです。

りんさん「自分の性格を偽っていれば受かったのか…」

ー面接の際、「女性だから」という理由で聞かれた質問はありませんでしたか?例えば、「就職してから、結婚して子供を産んだ後も働きますか?」というように。

あやか:女性だけに聞いているかどうかは分かりませんが、IT系では施工までを行う企業もあるので、「鉄塔をのぼったり、力仕事を任されることもあるけど大丈夫ですか」と聞かれたこともありました。力仕事は任せられない、と判断されたのでしょうか。そういった質問をされたのは1社だけでした。

りん:私から「男女比に差はありますか?」「女性でも活躍できますか?」と質問をしたことはありましたが、面接官から不快な質問をされたことはありませんでした。

かえって男性がかわいそう?

ー産休・育休制度が整っているかどうかは確認しましたか?

あやか:IT系の会社は女性の割合を増やすために、女性限定の会社説明会が行われていたり、「企業内の保育所がありますよ」と、環境が整備されていることをかなりアピールしていました。ひと昔前のような男性優位の印象はありません。

ゆい:航空業界は女性が多いので、こちらから質問をせずとも、多くの情報が提供されます。会社説明会には、子育てをしながら働く女性のブースがあり、実際にどのような働き方がされているかお話しを聞く中でイメージができました。

一方で、航空業界は少数派である男性がかわいそうだなと思うことがありました。就活中に仲良くなったCA志望の男性によると、選考フローの健康診断が男女同じ空間で行われ、尿検査のときでさえも同じ空間だったそうです。気まずかっただろうと思います。

ー10年ほど前までは、男性優位な業界が存在したり、女性が面接の際にセクハラ気味な質問を投げかけられたりしたようですが、皆さんそれは経験していないようですね。ただ、ゆいさんがおっしゃったように、女性が多い現場で苦しんでいる男性は、他の業界でもいるかもしれませんよね。少数派への配慮は、男女関係なく行われるべきだと思います。
ところで、長い就活の中で、皆さんがお世話になったものはありますか?

りん:キャリアセンター(各大学に設置されている就職・進学支援施設)にお世話になりました。私はマスコミ志望でしたが、試験や面接の質問事項が特殊な会社も多いので、同業他社の先輩の就職体験記を参考に対策していました。

ゆい:私は特にゼミの先生にサポートしてもらいました。ゼミ内には東京で就活をする人が多かったので、皆の都合に合わせて東京でゼミを開いてくれました。就活の状況について報告し合ったり、先生がエントリーシートを添削してくれたり、全面的にサポートしてくれました。

就活生はいろんな企業に足を運んで!

ー最後に、今後就活をする学生に向けてメッセージをお願いします。

ゆい:面接の際に、これまでに自分はどんなことを経験してきたか聞かれることが多いので、様々な経験をしておくことが必要かなと思います。

あやか:私は大学を決めるときも、SEになると決めたときも自分の直感に従うことが多かったのですが、自分が何をしたいのか分からずに悩む人も多いと思います。そういう人こそ、様々な企業に足を運んでお話を聞くことが大切だと思います。

友人の中には、やりたいことが定まっておらず、手あたり次第に有名企業を受けている人も居ました。小さい企業でも活躍できたり、大企業に入って埋もれてしまうこともあるので、企業の大きさだけでは判断してはいけないと思います。そういう人ほど、実際に企業に足を運んで、会社や業界のことを深く知るべきだと感じます。

りん:就活は今までの人生において、一番主体的になれた出来事でした。受験は何を勉強すべきか、やることが明確でしたが、就活は自分で考えて動くしかありませんでした。やりたいことが無かったり、将来のビジョンが固まっていない人ほど、とにかく動き始めて欲しいです。

ー今日はありがとうございました。

日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
早期内定やインターンシップからの別ルート採用など、内定を得るまでに決まったルートはありません。だからこそ、他人よりも優れた人材になるために、遅れをとらないように、必死で取り組んできた同級生の姿を数多く見てきました。男女格差や理不尽な採用は一世代前に比べ減ってきたように思いますが、マイノリティに対する配慮の欠落や、曖昧なルール設定に悩む就活生は今なお存在します。来年度の就活生が、自分の力を最大限に発揮し、悔いのない就活が出来ることを祈ります。

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