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パソコン足りない!図書館使えない!私の卒業どうなるの?オンライン授業、学生のホンネと大学の事情

大学生によるオンライン緊急座談会

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、学校の多くはオンラインでの授業に切り替わり、学校や学生は対応に追われている。大学でのオンライン授業は主にZoomやGoogleMeetなどのライブ授業と、YouTubeを利用したオンデマンド授業の2種類によって進められている。大学の再開から1週間ほどが経ち、多くの課題が浮き彫りになってきた。初めてのことだらけの中、都内の大学に通う3人にオンライン授業の感想や意見、大学に求める今後のあり方を聞いてみた。そこから浮かび上がった学生のホンネ、大学側の事情とは........。

参加者プロフィール
Iくん:私立大学4年。近現代の文学を専攻している。
Kさん:私立大学4年。商業に関して専攻している。
Sさん:私立女子大学4年。メディアに関して専攻している。

─オンラインでの授業が始まって1週間ほど経ちました。

Sさん:オンライン授業は長短があり、一言では表せません。想定されていなかった事態のなかで、教授も学生も柔軟な対応を求められているように感じます。私はライブでの授業を受けましたが、自宅の通信状態を気にしなければならなかったりと、これまでは必要なかったやりとりにストレスを感じることがあります。

Kさん:私は主にオンデマンドの授業を受けています。前日の午後から当日の夜まで視聴できるので、時間に縛られずに講義を受けることができるのが便利です。ただ、しっかりとスケジュール管理を自分で行わなければいけないので、自分を律することが大切だと感じています。

Iくん:教授によって利用するツールが違うのが少し面倒に感じます。オンライン授業が開始されるにあたり、たくさんのアプリをインストールしなければいけませんでした。

─では、オンライン授業で良くないなと思った点はどこですか?

Iくん:ライブであれオンデマンドであれ、電波や設備などの問題があると感じました。私が受けたライブ授業では先生の声が途絶えたり、画像が乱れたりすることがありました。別のライブ授業を受けるはずだった友人は、授業が行われているZoomの部屋に入ることができず、結局出席できなかったそうです。パソコンが用意できずにスマートフォンから参加したら、次回までにパソコンを用意するように注意を受けた友人もいます。

Sさん:私が受けたライブ授業は回線が不調で中断になっただけでなく、開講自体を取りやめてしまう授業がいくつもありました。受け手である学生側だけでなく、発信する側の先生の電波環境の問題もあるようです。

Iくん:そうそう。やっぱりパソコンに慣れている先生とそうでない先生とで授業の質に差が生まれていますよ。オンデマンド形式の授業はパワーポイントに音声を被せるものが主流ですが、パワーポイントに慣れていない先生はスライドを変える時の演出のパターンがいちいち変わっていたり、フォントが乱れていたり、添付された映像資料が閲覧の途中で止まって最後まで見ることができなかったりと、授業になかなか集中できませんでした。

Sさん:ライブ授業が始まる前に先生が「聞こえてますかー?」って5分くらい繰り返しているのも結構ストレス感じますね。「聞こえてるってば!」って(笑)。時間がもったいない(笑)。

Kさん:私はオンライン授業だと自由に授業に参加することができなくなったのが良くないと思いました。通常の授業では、履修登録をしていなくても授業に参加できる聴講という制度がありました。オンライン授業ではそれができなくて、大学に問い合わせても現時点ではそういった事例には対応できないと言われてしまいました。あとは授業が終わった後に先生に質問に行くこともできないので、先生との交流がないのは寂しいなぁと思ってしまいます。

Sさん:そうなんですか?私の大学だと聴講もできるようになっています。大学によって色々と違いがあるんですね。

Iくん:実はオンライン形式になったので授業の内容が変わってしまったこともありました。履修登録前に1学期全体の授業内容を知ることができるのですが、オンライン形式になったから教える内容を変更したり、一部削除する授業が目立ちました。成績評価をテストからレポートに変更する授業も多くて、履修登録をする判断基準が消えましたね。

Sさん:テストやレポートの点から言うと、オンライン授業で出された資料を印刷したくても、大学の設備が使えないので困っています。私は今まで授業の資料を大学にある公共のプリンターを利用していました。大学が封鎖されたので、印刷ができず、テストやレポートで使う際に用意できるか不安です。

─オンライン授業に関する大学側の対応はどのようなものがありますか?

Iくん:僕の通っている大学では、6月中旬までの授業をオンライン形式にすると決定した4月の下旬から、必要としている学生にはノートパソコンやWi-Fiルータを無償で貸し出すと通知を出していました。

Kさん:私にも大学からそういう連絡が来ましたね。でもその通知を見た時は「いやいや、いったい何台パソコン用意しているの?絶対足りないでしょ!」って思いました。

Iくん:貸し出しに必要な申請書類を読んでみたけれど、数に限りがあり、応募者多数の場合は選抜する場合があると書いてあって、「もし選抜に外れたらどうなるんだろう?授業が受けられないかも?」って考えましたね。

Sさん:私の大学でもオンライン授業を受けるために必要な機材の貸し出しをしていました。それからオンライン授業になるから、履修登録期間を1週間くらい延長してくれましたよ。

Iくん:え(笑)。登録期間延長してくれたの?うらやましいな。

Kさん:私もうらやましい。オンライン授業関係の対応だと、学校側は機材の貸し出しぐらいしか対応してくれないよね。

─大学生が思う改善点は?

Ⅰくん:友達の話になりますが、パソコンが家族共用の1台しかないから、できれば借りたいっていう子がいて。でも、大学からのメールには「特に困窮している学生」のように申請の条件が曖昧な書かれ方をしているから、自分が条件にあてはまるか分からず、結局遠慮して申請しなかったようでした。大学側が「困っている」の基準をはっきりさせてくれた方がいいかもしれません。

Kさん:たしかに。私は、この体制になるまでは当たり前に使えていた聴講制度を、オンラインでもできるような仕組みを整えてほしいです。払う学費は変わっていないのに、正直な話、なんだかちょっと損をしているような気分かも。

Sさん:私の大学は、ほぼライブ授業ですが、できることならオンデマンドと平行してほしいです。こうやって話し合っていても、ライブ形式の良さがあまり頭に浮かばない(笑) 。

Ⅰさん:そうだよね(笑)。オンデマンドといえば、僕は授業の公開期限をもっと伸ばしてほしいです。今は2日くらいなのですが、せめて3,4日とか。オンデマンドを無期限で公開してくれたら、学生がうまく分散して、今よりも安定した受講ができるようになるんじゃないかと思います。学生側のオンラインの環境でも、受けられる授業の質に差が出ちゃうのは嫌だなあ。

─逆にオンラインで良いなと思うことはありましたか?

Kさん:私は正直、メイクや着替えなど朝の支度や、通学時間を考える必要がなくなったのが嬉しい(笑)大学まで通学に2時間弱かかっていたから、浮いた時間を好きなように使っています。寝たりとか(笑)。

Ⅰくん:確かに時間的な余裕が生まれた。僕の場合オンデマンドは、今のところ2日くらい授業を見られるので、自分の好きなタイミングで授業を受けられるのがありがたい。あと、一時停止とか、巻き戻しとかの機能がついているから自分のペースで授業を理解できるようになりました。ノートもとりやすいし。

Sさん:私はライブ型の授業が主なのですが、オンデマンドとは逆で時間割がきちんと機能しているので、生活リズムは保たれているかもしれません。普段の授業通り、聞き逃さないようにしようって集中できる。

Kさん:なるほど。私の場合はゼミがライブ型なのですが、教授がリアルではできなかったことをしようと張り切っています。普段は学年ごとに授業をしていたのですが、後輩の発表を先輩がズームで視聴しに行くことになったりとか。学年間のつながりが生まれそうな予感。

Sさん:地方の実家に帰っているゼミの友達は、オンラインだからこそ授業に参加できていると思いました。自分が今いる場所に捉われず、授業が受けられるのはとてもいいことですよね。コロナで留学を早めに切り上げて帰ってきた友達は、留学先の授業と元々の大学の授業を平行してオンラインで受講できるので、どちらの単位も諦めずに済んだと言っていました。

Ⅰさん:なるほど。僕の友達も、大けがで一時期休学しなければならない子がいましたが、オンライン授業だったらそのような心配もなかったのかもしれませんね。オンライン授業もオンライン授業でメリットはあるな。

─ここまでオンライン授業について色々聞いてきましたが、これからの大学はどのようになれば良いと思いますか?

Kさん:対面の方がもちろんいい。ですが、オンライン授業は人と会うことができない今の状態だからこそ逆に不便に感じるのだと思います。

Sさん:今後、オンライン授業と対面の授業が組み合わされば、大学に行くというハードルが下がります。オンデマンドであれば、子供がいる親でも空いている時間に授業を受けることができるようになると思います。

Iくん:そうすれば色々な人が色々なところから授業に参加できる、開かれた空間になりそう。

Sさん:オンラインも対面もいいところがあるので、それぞれの長所が活かされるように共存した新たな大学の仕組みができていけばいいな。

授業以外のサポートも必要

大学生たちを苦しめているのはオンライン授業だけではない。試験ができないためレポートでの評価に変更された授業が多いが、図書館が閉まっているために参考文献を手に入れることができないのだ。特に就職活動中で時間の限られた4年生にとっては、卒業論文を仕上げるにあたり、これは死活問題だ。
 多くの大学は夏休みまでのオンライン授業が決定している。学生の自宅環境によっての教育格差が生まれないようにするには、まだまだ課題は山積みだ。大学側にも、意欲のある学生が学ぶ機会を失ってしまうことのないよう、サポートの体制を整えてほしい。
 新型コロナウイルスとの共存を考えると、今後の大学のあり方も検討していかなくてはいけないのではないだろうか。

ニュースイッチオリジナル
小川淳
小川淳 Ogawa Atsushi 編集局第一産業部 編集委員/論説委員
大学でのオンライン授業の実態と感想を大学生3人に聞いてみました。各大学とも泥縄的に始まったので、もっと混乱しているかと思ったのですが、zoomなどのインフラを使い慣れている教員は問題なかったようです。うまくいくかは大学というより、教員自体のスキルの差が大きいようです。強制的に大学という場から隔離され、それでも状況に順応さぜるをえないため、教員、学生とも手探りで進んでいますが、当然ながらメリットデメリットある中で、時間や空間に縛られないメリットはいかしつつ、改善していってほしいものです。世の中が大きく変わるというのは、こういう時しかないですもんね。とはいえ、パソコンを持っていない学生たちはやはり大変ですよね。特別定額給付金が出たら、その10万円でパソコンを買ってはどうでしょうか。

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