大黒柱の死去、事業譲渡できなかった空調ダクト会社の破産劇
空調ダクトなど建築資材の加工や販売を行っていた山恭は、9月15日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は2000年5月に創業。同年12月に法人改組され、空調用ダクトを中心とした建築資材の加工販売と空調設備を主体とした管工事を手がけていた。
マンションや商業施設などに用いられる空調用スパイラルダクトを主力とし、他社との差別化を図るため、得意先にとって安価で効率的な資材調達ができるような提案のほか、販売と同時の取り付けなど工事請負まで一貫して提案。利幅確保が見込める工事込み案件受注を強化し、ピークの07年10月期には年売上高約13億4900万円を計上していた。
しかし、その後は急激な景気減退や同業他社との競合などで売り上げが漸減。また施工管理技術者の減少など人手不足から現場も限られ、19年10月期の年売上高は約5億9000万円に落ち込んでいた。加えて案件の先行資金負担から資金繰りも厳しく、金融機関から返済猶予を受けていた。
こうした中、20年2月に同社の元代表が死去。代表を変更し、事業継続のために事業譲渡やM&A(合併・買収)などを模索したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で計画が頓挫して事業継続を断念。9月7日に事業を停止し、事後処理を弁護士に一任した。
同社の経営破たんの要因は大きく二つ。一つ目は売り上げが漸減するなか、人手不足の影響から選別受注を行わざるを得なかったこと。その結果、売り上げ減少に歯止めをかけることができなかった。
二つ目は運営の柱でもあった元代表が死去したこと。後継者が不在だったため事業譲渡などを模索したが、新型コロナによる先行き不透明感で事業継続に関する計画がすべて振り出しに戻ったことだろう。大黒柱を失った同社は、タイミング悪く新型コロナの荒波に飲み込まれた結果、最終的には破産の選択しか残っていなかった。