全ての人に司法への平等なアクセスを!法律×ITで挑むSDGs
ターゲット16.3
国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、全ての人々に司法への平等なアクセスを提供する
<ケーススタディ>「ザンレコ」や「弁護士ドットコム」
法律とITを掛け合わせた「リーガルテック」を強みとする企業が相次ぎ誕生している。このターゲット「全ての人々に司法への平等なアクセスを提供する」ことがリーガルテックによるイノベーションで実現しつつある。
日本リーガルネットワーク(東京都中央区)はスマートフォンの全地球測位システム(GPS)機能を使い、会社の住所を登録すれば自動で労働時間を計測する無料のアプリケーション「残業証拠レコーダー(ザンレコ)」を提供する。計測した労働時間から残業時間を推計でき、このデータを未払い残業代の証拠として示談・裁判で使える(日刊工業新聞2017年3月21日付)。
同社ホームページによると、月収25万円のサービス業の男性が8カ月ザンレコを利用し、そのデータを証拠に訴訟で1000万円の残業代を獲得した例があるという。南谷泰史最高経営責任者(CEO)自身も弁護士で、勤務先や自宅住所から近くの弁護士を検索できるサービスも提供している(2020年8月9日ホームページアクセス)。
弁護士ドットコムは社名と同じ法律相談のポータルサイトを運営する。登録弁護士数は1万9000人(弁護士の2.2人に1人)、月間サイト訪問者数は1100万人で、法律系のサイトでは日本最大級の規模を誇る。無料で弁護士に相談できる「みんなの法律相談」や「弁護士検索機能」のほか、月間130本の紛争トラブルを法的に解釈したニュースを掲載している(2020年8月9日アクセス)。
約10万ページの法律専門書や官公庁などの資料を検索・閲覧できるサービスを提供するベンチャー企業、リーガル・テクノロジー(東京都千代田区)も登場している。法律の専門書は高価な上に分厚く場所を取るため、同社が「図書館代わり」としてサービスを提供する。利用料は月額5200円(税別)。自分で全部の専門書を購入するよりは、はるかに安価な値段でサービスを受けられる(2020年8月9日アクセス)。
弁護士は「相談料が高い」というイメージがあり、どうしても一般の人は最初に相談に行くのをためらってしまう。それが、リーガルテックの登場でそのハードルが下がり、まずはネットの無料相談から気軽に相談しやすくなった。その結果、一昔前よりは誰でも簡単に司法にアクセスできるようになったと言える。
リーガルテックを味方に。まずは無料弁護士相談から
資金に限りのあるベンチャー企業にとってもリーガルテックは強い味方となる。各種リーガルテックホームページの弁護士検索機能を使うと、弁護士ごとの専門分野を把握でき、自社が抱える問題に対し、適確な答えを出してくれそうな弁護士をピンポイントで探せる。弁護士を探す時間やコストを大幅に削減できる。
日本リーガルネットワークは「泣き寝入りのない社会へ」をうたい文句にしている。これは言い換えると、SDGsの「誰一人取り残さない世界」と通じるものがある。
(「SDGsアクション <ターゲット実践>インプットからアウトプットまで」より一部抜粋)
新刊の紹介
書名:SDGsアクション <ターゲット実践>インプットからアウトプットまで
著者名:日刊工業新聞社 編、松木喬・松本麻木乃 著
A5判、304頁、2,420円
<販売サイト>
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Rakutenブックス
Yahoo!ショッピング
日刊工業新聞ブックストア
<書籍紹介>
国連加盟国によって採択されたSDGsは、17の目標と169のターゲットで構成されている。本書では、日本企業が取り組みやすいターゲットを取り上げ、企業が実践しやすい具体的な活動を、ターゲットごとに整理。企業規模、産業分野などの垣根を越え、70以上のケーススタディを紹介する。
他社が実際に行っている活動から、SDGsを推進したい企業関係者に具体的なSDGsの取り組みのヒントを与える。