卵巣がんの治療薬候補が臨床試験開始見込み、早ければ2020年中に
ナノキャリアは、遺伝子治療薬「VB―111」の卵巣がんを適応症とした第3相臨床試験について、医薬品医療機器総合機構(PMDA)との事前相談を開始した。米国を中心にイスラエルのVBLセラピューティクスが実施中の、国際共同臨床試験に参加する。日本での第1、第2相試験が不要になる。早ければ2020年中に開始できる見込みだ。
VB―111は、ウイルスベクターの中に血管を新生する内皮細胞を選択的に細胞死させる遺伝子を組み込んだ医薬品。がん細胞に栄養がいかなくなり、死滅させられる。
VB―111が引き起こした免疫反応が、がん細胞を攻撃する作用も期待できる。原発巣である卵巣がんおよび転移したがんを治療できる可能性がある。
臨床試験の対象は標準治療薬の一つであるプラチナ製剤が効かなくなった卵巣がん。プラチナ製剤やタキサン系抗がん剤は2割の人には効かず、効いた7―8割の人も半数以上が2年以内に悪化するという。
臨床試験は30例程度になる見込み。松山哲人社長は「卵巣がんは治療法が見つからず悩む人が多い。新たな選択肢として提供できるようになれば」と話す。
VB―111はVBL社が開発した薬で、ナノキャリアが日本における開発、供給、販売権を持つ。VBLが実施中の試験において、中間報告で効果が確認されたため、日本から参加する。
ナノキャリアは1996年設立の創薬ベンチャー。独自技術「ミセル化ナノ粒子」を保有し、がん領域を中心に医薬品の研究開発を進めている。
日刊工業新聞2020年9月17日