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手形は8世紀のイスラム、信用調査会社は19世紀の英国…。日本の倒産情報の起源は?

信用調査業の歴史を学べる唯一の企業博物館

信用調査業の歴史たどる

帝国データバンク東京支社の9階にある「帝国データバンク史料館」は、信用調査業の歴史を学べる唯一の企業博物館だ。2007年に開館した。創業100周年を記念した社史編纂(へんさん)のために集めた貴重な資料を展示する。世の中でなじみの薄い信用調査の役割を多くの人に知ってもらう機会を創出する。館内には昔の調査報告書や会社録、印刷物など多く展示され、信用調査業の歴史をたどる構成になっている。

信用取引の歴史は古く、8世紀のイスラムでは手形が使われていた。信用取引は決済が商品納入後やサービス実施後に行われ、資金回収のリスクが生じる。リスク軽減には調査が不可欠で、信用取引の普及に伴い世界各地で信用調査会社が設立された。現在、確認できる最初の信用調査会社は1810年に誕生した英ペリー社と言われ、産業革命で商取引が拡大した時代背景がある。展示室にはペリー社の事業案内が展示されている。書面には、個人倒産や破産、不渡り、債権者の支払い命令書、詐欺ばくち取引、偽りの身分照会、詐取された物品家屋など、現代社会でも通用する情報を提供したことが分かる。

信用調査会社は欧州から米国、全世界へと広がり、日本には明治維新後、日銀大阪支店長の外山修造によって信用を興す所、「興信所」として取り入れられた。展示室では帝国データの前身「帝国興信所」が発刊したさまざまな書籍や雑誌のほか、創業者が使用していた机やいすが飾られている。資産額による長者番付やゆかりの人物検索パネルなど楽しめる要素も多い。利用者は取引先企業や与信担当者、経営史・産業史の研究者、就職活動中の学生などが多い。

年数回の企画展や古文書講座などのイベントを企画する。福田美波学芸員は「身近な信用調査をより多くの人に知ってもらいたい。最近では、観光ツアーによる街歩きや修学旅行生の見学も目立ち始めた」と語り、利用者の広がりに手応えを感じている。

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため当面の間、臨時休館

信用調査関連の資料をパネルや映像で見ることができる

【メモ】▽開館時間=10―16時半▽休館日=土―月曜日と祝日、年末年始▽入館料=無料▽最寄り駅=JR中央線・総武線、都営新宿線、東京メトロ南北線・有楽町線「市ケ谷駅」▽住所=東京都新宿区四谷本塩町14の3▽電話番号=03・5919・9600

日刊工業新聞2020年4月24日

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