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高速道路のトイレ、いつの間にか快適に…!NEXCO東日本の地道な努力

高速道路のトイレ、いつの間にか快適に…!NEXCO東日本の地道な努力

海ほたる4階トイレ

高速道路でほとんどの人が立ち寄るサービスエリアやパーキングエリア(SA・PA)のトイレ。近年リニューアルが進み、管理の工夫もあり使いやすく進化している。円状にぐるりと設置された個室や、海を見ながら用を足せるトイレも登場した。

快適・便利のために

NEXCO東日本が『トイレリフレッシュ計画』を立ててトイレの改善を積極的にPRしはじめたのは2007年。リフレッシュ計画開始後3年ほどは、全体的な底上げを図ることが目標だった。暖房・洗浄便座の整備、温水の自動水栓、バリアフリー化を進めていった。
 「2005年に民営化したこともあり、お客様目線に立ってSA・PAの『快適・便利』に注力していこうという流れがありました」と話すのは、管理事業部施設課の市川和志氏。同社内のトイレ情報誌「あさがお」編集部に所属している。

「あさがお」はリフレッシュ計画開始の翌年に創刊。施設課が編集、発行している。「SA・PAは私たち以外にも、クリーンスタッフや商業施設関係など、さまざまな人が関わりながら運営している。その方々に、トイレに関する取り組みを知ってもらい、意見をもらって仕事に反映したいとスタートした」(市川氏)。月1回発行しており、編集部メンバー12名で制作している。

あさがお編集部の市川和志氏(右)、小泉泰一氏

忘れ物20分の1のアイデアとは

大規模リニューアルや新規建設の際には、今まで標準でなかった付加価値的な設備を導入するようになった。例えばフィッティング(着替え)ルームや、パウダーコーナー、空き状況のデジタル表示などを増やしてきた。訪日外国人を意識したピクトグラム、トイレ前エリアでのWi-Fiフリースポット設置なども進めている。

さらにトイレだけでなく、SA・PA全体で育児支援に力を入れている。男子トイレにもおむつ替えのベビーベッドやベビーチェアの設置を進める(2020年2月時点、関東支社管内115エリア中93エリアで設置済み)。24時間利用できるベビーコーナーや屋根付き優先駐車スペース、おむつの小単位販売などの100%実施を目指している。

蓮田SAのベビーケアルーム

また、使用しやすいトイレを設計の段階から検討することもある。先日リニューアルした砂川SAでは、空き状況が一目でわかるようにトイレが円状に設置されている。
 「高速道路の休憩施設に寄る一番の理由はトイレ利用だと思う。高速道路利用者の7割がトイレに立ち寄っているので、大事なポイントだと考えている」(建設事業部施設設計チームの小泉泰一氏)。

日々のオペレーションから工夫を重ねている部分もある。忘れ物が多い状況を改善しようと、件数の多いスマートフォンや小物類を置くトレイと扉の鍵を一体化。置いた小物を取らなければ鍵が開けられないような工夫をしたところ、SNSなどでもアイデアが話題となった。
 「もともとは北海道の室蘭管理事務所で生まれたアイデアです。ここは管理範囲が長く、さらに事務所が範囲の端にあるため、忘れ物をすると取りに行くのにすごく時間がかかっていたのです。なんとか忘れ物を減らせないかということで開発されました」(小泉氏)。忘れ物は年間80件から4件に削減された。

忘れ物防止トレイ(施錠時)
忘れ物防止トレイ(開錠時)

スマホの利用増でトイレに変化

トイレの混雑も改善されつつある。高速道路では交通量からSA・PAの駐車マスの数が決まり、そこからトイレの広さや便器等の数を算出するというルールで共通化されている。しかし近年では男子トイレの個室の利用率が上がり、利用時間も長くなっているため、新しいトイレでは従来よりも個室が増えている。「トイレが綺麗になったこともありますが、スマートフォンの利用が増えていることも影響しているようです」(小泉氏)。
 デジタル表示や設計の工夫により、空き状況が見やすくなったことも回転率向上につながっている。

蓮田SAトイレ

清掃をするクリーンスタッフからの声も改善に活かされている。例えば、男子小便器は床に接地していたものを浮かせて設置することで清掃しやすくなった。また一部のトイレでは清掃時にエリアを区切って「分割清掃」がしやすいような設計にした。清掃方式も床に水を撒いてブラシでこするような湿式から乾式に変更することで、清掃中でもトイレを利用しやすくなった。

分割清掃を可能にしたトイレ
 2019年7月にオープンした蓮田SA(上り線)では試行的にロボット清掃を導入している。

SA・PAは近年、外部開放も積極的に取り組んでいる。「地域に食事をする場所がないので助かるといった声をいただいたこともあった」(市川氏)。
 高速道路利用者に限らず、地域に開かれた施設となっていくことが期待される。

【番外編】

Q.連休や年末年始などで高速道路が混雑する際のトイレの上手な使い方は?

 A.「基本的には渋滞とSA・PAの混雑は連動しています。ホームページの渋滞予測を参考にして、渋滞が始まる手前でSA・PAに寄っておくことをおすすめします」(市川氏)。また、大規模や駐車マスが広いSA・PAにはサブトイレが設置されている場合がある。「目立たない場所にある場合もあるので、案内板などを見て確認してみてほしい」(小泉氏)。

Q.特色のあるSA・PAを教えてください。

 A.・東京湾アクアライン 海ほたるPA
 2019年4月にリニューアルした。トイレからは海が一望できる。

海ほたる4階トイレ
 ・関越自動車道 赤城高原SA下り線
 雄大な山々を望むことができる眺望のよさが自慢。
赤城高原SAからの景観
 ・関越自動車道 谷川岳PA
 谷川の湧き水『六年水』を汲み、持ち帰ることができる。トイレや商業施設に木材が使用されており、傾斜をうまく使った造りで景観にマッチしている。
谷川岳PA(下り線)

ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
いまはなかなか外出ができない状況にありますが、今後高速道路でお出かけの差にはぜひトイレの進化にも目を向けてみてください。

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