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「一度使用すると手放せない」ウォシュレット、納期遅延も目線は世界

おしり洗う文化定着へ

TOTOは中国やアジア、欧米など19の国・地域でウォシュレットを販売する。2019年3月には世界の累計出荷台数が5000万台を突破。19年3月期の海外市場における販売実績は58万台で、23年3月期には200万台の販売目標を掲げる。現在は新型コロナウイルスの感染拡大で部品の納入が遅れて納期遅延が続くなど影響を受けているが、中長期的に海外で「おしりを洗う」文化の定着を目指す方針は変わらない。

ウォシュレットは400点もの部品で構成。日本国内の2工場、マレーシア、上海、タイの5工場で生産している。タイでは2月に生産を始めたばかりだ。巨大市場の中国には温水洗浄便座のメーカーが200―300社あるとされる。

TOTOのメインターゲットである大都市の一線都市は住宅市場が停滞しており、(副省級や中小都市などの)二線・三線都市へ販売をシフトしている。二線・三線都市は一線都市と比べて価格設定が低く、ウォシュレットが付かない便器のみの設置も多い。安部壮一取締役専務執行役員は「3―5年後に二線・三線都市の物件単価が上がればウォシュレットの需要も出てくるだろう。20―30年位の長期スパンで対応していく」と今後を見据える。

電気工事ネック

中国とともに需要増を見込んでいるのが米国だ。米国では、あまり温水洗浄便座が普及していないが、今後は一般住宅での伸びを見込む。普及してこなかった要因としては、トイレに電源を設置する電気工事などがネックとされる。安部取締役は「家の中で市民権を得るまでには時間がかかるだろう」と分析する。

東南アジアなどの暑い地域では、湯ではなく水だけで洗浄する「エコウォッシャー」を販売する。低価格で電気工事が要らないため簡単に設置でき、一般家庭でも使用される。人口が多いインドネシアでも今後の経済成長が新たな需要につながると期待する。

ウォシュレットは一度使用すると手放せないものとして継続的に使用される場合が多い。普及段階の中国をはじめ、世界を見渡すと潜在的に高い発展の余地がある市場が多い。安部取締役は「今後の海外普及が楽しみだ」と期待を示す。

日刊工業新聞2020年3月27日

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