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「緊急事態宣言」の可能性高まる、想定すべき経済のリスクシナリオ

「緊急事態宣言」の可能性高まる、想定すべき経済のリスクシナリオ

安倍首相の決断は…(4月3日に官邸で開かれた未来投資会議=首相官邸公式サイトより)

新型コロナウイルス感染症が東京都など都市部で広がる中、「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく緊急事態宣言の発令の可能性が高まっている。安倍晋三首相が宣言すれば、都道府県知事は法律に基づいて外出自粛要請などを実施でき、企業活動に大きな制約が生じる。宣言の強制力次第で事業継続が困難になることも予想される。産業界はどう対処すれば良いのか、見通しにくい状況が続く。

日本総研・高橋氏に聞く「収束後、内外需バランスのとれた成長を」

日本総合研究所の高橋進チェアマン・エメリタス(名誉理事長)に、経済への影響や対策などを聞いた。

―感染拡大による世界経済への影響は。
「3月以降、中国以外の国に感染が広がり局面が変わった。2020年度の世界経済の成長率はゼロに近く実質、景気後退に陥る。5月中に収束にめどがつくと想定した場合でも日本、欧州、中国はマイナス成長、米国はかろうじてプラス成長」

―想定すべきリスクシナリオは。
「6月以降も収束の兆しが見えなければ世界各国が抱える構造問題が表面化し、リーマン・ショック並みに世界経済が停滞する。この場合、米国も20年度はマイナス成長に転じ追加利下げにより日米の金利差が縮小し、円高になるリスクが想定される。新興国通貨安や資源価格の下落も世界共通の懸念材料だ」

―日本への影響は。
「足元で急速に悪化している。インバウンド(訪日外国人)の減少と外出自粛による消費の落ち込みに加え、これから製造業でサプライチェーンの混乱による影響が本格化する。仮に5月中に収束にめどがつき、7月以降に正常化に向かったとしても、悪影響を払拭(ふっしょく)するには時間がかかる。特に小売り、卸、不動産、観光業への打撃は避けられない」

―東京などでロックダウンが起きた場合はどうなりますか。
「現状は一定の企業活動を維持できているが、ロックダウンされれば産業界への影響はより大きくなる。テレワークが急速に普及しているものの出勤しないと事業を継続できない企業もあり限度がある。一方で感染拡大を抑え込むにはやむを得ない措置だ」

―足元で止血に必要な経済対策は。
「取るべき経済対策はある程度、世界で共通している。医療機関への公的・財政資金の投入や金融・財政政策などあらゆるマクロ経済政策を総動員すること、中小企業や労働者への支援が挙げられる。日本では国内総生産(GDP)の10%程度の規模を躊躇(ちゅうちょ)なく打ち出す覚悟が必要だ。中小へは補助金など直接的な手段をとるべきだろう」

―収束後に求められる成長戦略は。
「コロナ問題は世界の中国依存度の高さを浮き彫りにした。日本も今まで以上に内需を活性化し、内外需バランスのとれた成長を志向すべきだ。デジタル化、いわゆる政府が掲げる『ソサエティ5・0』をいかに早く社会の中に浸透させられるか。生産性を高めるデジタル革命への取り組みは内需を強くする」

(聞き手=下氏香菜子)
日刊工業新聞2020年4月1日/3日の記事を一部修正

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