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【新型コロナ】治療法確立までどう凌ぐか、感染症学会と国立大の力をもっと活用せよ

【新型コロナ】治療法確立までどう凌ぐか、感染症学会と国立大の力をもっと活用せよ

新型コロナ感染症は複数の薬に治療効果があると期待されている(写真はイメージ)

新型コロナウイルスの感染が拡大し続けている。2月13日以降、連日新たな感染者が報告され、感染者の小規模集団「クラスター」が各地で形成されるなど、感染拡大が収まる兆しは見えない。人の移動や密集する環境をつくらないよう、行政や企業も対策を進める。爆発的な感染者の増加「オーバーシュート」を阻止して医療機関の崩壊を防げるかどうか、瀬戸際の戦いが続く。

新型コロナの流行によって、新たな感染症にいかに備えるかという課題が浮き彫りになった。米国では疾病管理予防センター(CDC)のような大規模な組織が対策に当たる。日本でも有事に備えた体制づくりは必要だが、人材や設備、費用など限られた資源をどのような比重で割り当てるかは難しい問題だ。国内にCDCと同様の仕組みを作るのは現実的ではない。

日本感染症学会・舘田一博理事長「平時と切り替える仕組みを考えて作っていくべきだろう」と提案する。「感染症学会約1万1000人の会員のほとんどは感染症の専門医だ。学会としてはこうした人の力をいかに有事に活用するかということを検討したい」と話す。

また、東京医科歯科大の田中雄二郎学長は「国立大学の力はもっと活用できる」と強調する。感染症の原因となるウイルスは多くあるが、必ずしもそれぞれについて専門家が多くいるわけではなく、国内に数人しかいない場合もある。「全国の大学にどのような専門家がいるのかが分かるネットワークの構築が、対策の手段として考えられる」(田中学長)。

感染症が発生した場合、その専門家を中心としたチームを作り上げる。大学のネットワークを活用した対策チーム作りは「新たな研究機関を作るよりはるかに少ないコストでできるはずだ」(同)。

現在、新型コロナ感染症は抗インフルエンザウイルス薬など、複数の薬に治療効果があると期待されている。治療法が確立するまでに、いかに感染拡大を防いでいくかが大きなヤマ場となる。せきエチケットや手指衛生の徹底も引き続き重要になる。舘田理事長は「企業や学校なども、密閉空間、人が密集する場所、密接した近距離での会話の『三つの密』を避けるよう対策してほしい」と呼びかける。

日刊工業新聞2020年4月2日の記事から抜粋

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