富士フイルムが治療薬「アビガン」増産、出荷は4月以降に
新型コロナ対策、首相が早期の薬事承認を目指す
富士フイルムは29日、新型コロナウイルス感染症への治療効果が期待できるインフルエンザ薬「アビガン」の増産を決めたことを明らかにした。子会社でアビガンを開発した富士フイルム富山化学(東京都中央区)が富山工場(富山市)で生産を始めた。出荷は4月以降になる見通しだ。
アビガンはウイルスの「複製」を助ける「RNAポリメラーゼ酵素」を阻害する薬剤で一般には流通しない。国が新型や再興型のインフルエンザの流行に備え、200万人分を備蓄している。
新型コロナ感染症に対する有効性も期待されており、藤田医科大学病院(愛知県豊明市)などで感染者を対象に試験的な投与が実施されている。ただ、副作用の懸念があることから、妊婦などには投与できない。
一方、中国政府はアビガンについて、中国国内の医療機関が行った臨床試験で、新型コロナ感染症に対する治療効果が認められたと発表した。アビガンを投与した患者は短期間でウイルス検査の結果が陽性から陰性になり、発熱やせき、肺炎などの症状も一定の改善が見られたと報告されている。治療薬の一つとして医療機関に使用を推奨する方針だという。
アビガンについて安倍晋三首相は28日の記者会見で、「ウイルスの増殖を防ぐ薬であり、既に症状の改善に効果が出ているとの報告がある」と述べた上で、「新型コロナウイルスの治療薬として正式に承認するにあたって、必要となる治験プロセスを開始する」と、早期の薬事承認を目指す方針を明らかにした。
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