キヤノンは新規事業「ネットワークカメラ」をどう育てる?
キヤノンは、工場自動化(FA)におけるネットワークカメラの活用拡大に力を注いでいる。生産現場における映像活用は製品の点検や異物混入の防止の他にも、画像処理ソフトウエアを活用することで、作業の効率化や協働ロボットのサポートといった使い道がある。
ネットワークカメラの特徴の一つは視野の広さ。製造や検品などに用いられる生産現場用カメラの多くは撮影できる範囲が狭く、1カ所に複数台設置する場合もある。上下左右に首を振れるネットワークカメラはレイアウトの自由度が高い。
ピント合わせや露出の最適化なども自動でできるため画像処理ソフトと組み合わせることで使い道が広がる。2018年に発売した画像処理ソフト「ビジョンエディション」は計測機器やバーコードの読み取り、数字の認識などが可能になる。例えば無人搬送車(AGV)と組み合わせると着荷確認の自動化ができる。自社工場では大量の複写機の在庫管理や稼働前の機械の点検で活用している。
デンソーウェーブ(愛知県阿久比町)やユニバーサルロボット(デンマーク)製の協働ロボット専用のビジョンエディションも開発した。専用ソフトを使うことで、ロボットと連動して動くネットワークカメラを簡単に導入・運用できる。映像を活用するFA導入のハードルを下げることで、協働ロボットに欠かせない“目”として需要の拡大を図っている。
FA向けの提案は、大規模だが、攻略が難しい中国市場も含めて広く需要があると見込む。イメージソリューション事業本部長の山田昌敬常務執行役員は「カメラとソフトを組み合わせた提案は、カメラ単体や防犯用途で勝負するよりも(中国市場を)開拓できる」と語る。キヤノン傘下にはネットワークカメラ大手のアクシス(スウェーデン)や映像管理基盤大手のマイルストーンシステムズ(デンマーク)といった強力な味方もいる。グループ力を発揮してさらなる成長を目指す。(国広伽奈子)