キヤノンとニコン、プロ向けミラーレス巻き返しの切り札
スポーツや報道現場など、決定的な瞬間を確実に捉えるカメラ(デジタルカメラ)は、長年キヤノンとニコンの大手2社による一眼レフの独壇場。しかし近年はミラーレスもシャッター音のない静音性や機能向上が評価され、徐々に支持を広げている。両社もこの動きを認識し、巻き返しを図っている。
スポーツや報道現場の撮影では失敗が許されず、プロが信頼する“間違いのない”カメラが求められる。キヤノンとニコンは一眼レフで長年このニーズに応え、参入障壁の高い牙城を築いてきた。キヤノンは2019年秋のラグビーワールドカップにおいて、決勝トーナメント8試合平均で報道用カメラの同社製品使用率約70%をたたき出した。ただ、両社の一眼レフの需要は依然として強いものの、ミラーレスの引き合いも徐々に高まっている。
フルサイズミラーレスで高いシェアを握るソニーは、インパクトの瞬間まで静音性が求められるゴルフなどの現場で製品の支持を広げる。通信機能の向上もプロ層に好評という。オリンパスやパナソニック、富士フイルムといった競合各社も、画質や機動力にこだわった製品で今後も需要が底堅いプロ・趣味層の取り込みを図っている。
キヤノンとニコンはフルサイズミラーレスへの参入は遅れたものの、ここ1年半で10本前後の交換レンズを投入し巻き返しを急いでいる。
ニコンの「Zシリーズ」では、付帯率(本体1台当たりのレンズ販売数)が改善。池上博敬執行役員は「システムへの信頼感が醸成されてきている」と手応えを示し、さらに本数を増やしてユーザー拡大につなげる。
データ出力を簡単、高機能にするファームウェア(カメラやレンズに組み込んだソフトウエア)の有料アップデートサービスも販売が好調だ。顧客のワークフロー改善につながる提案を開発テーマの一つとして重視。第5世代通信(5G)の開始も「ワークフローにはポジティブな影響が必ずある」(池上執行役員)と注目する。
カメラ本体の中高級機種の開発も重要テーマ。キヤノンは8K動画撮影に対応した開発中のフルサイズミラーレス「EOS R5」を、早ければ東京五輪・パラリンピック前に投入する方針だ。
一眼レフは2月に最上位機種の最新モデルを発売済み。「EOS R5」を含む「EOS Rシリーズ」は「まずハイアマチュアクラス(趣味層)を充実させる」(戸倉剛常務執行役員)考えだが、プロ向けももちろん視野に入っている。プロ向けの譲れない市場に総力をかける。
(取材・国広伽奈子)