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挑戦しないで何が人生だ!“全裸監督”村西とおるの“狂熱”に迫る

全文公開 約1万字 ロングインタビュー
―最近はテレビにも制約が増え、メディアとしての力が弱まっています。

異端こそ、キラーコンテンツであって、ワクワクドキドキするのに、メディアの業界が萎縮しちゃっている。なぜかというとネットの普及ですよ。ネットにはいろんな人が巣食っているが、クレームを言って自己欲求を満たそうとする病的な人もいる。これに振り回されちゃう。クレームといえば、私も先日、厚生労働省にエイズ啓発のイベントに出てほしいといわれたことがある。私も国にお叱りを受けたことはあっても、お国のために何かしたことはないから、「いいですよ、お伺いします」と引き受けたが、出演2日前に辞退して欲しいと言われた。「僕からエントリーしたんじゃないよ」と言って事情を聞くと、クレームがあったからだという。

ともかく、メディアは跳梁跋扈するクレーマーにびびっている。すくんでいる。心を揺るがすようなものには反対もあるはずだけど、そういうことに立ち向かえないサラリーマンになっている。そんなに御身が大事ならなぜメディアの仕事をするんだよ。このままだとテレビやラジオもみんななくなってしまうよ?五臓六腑が沸き立つようなものを提供するという気概がないんだよ。観客も含めて、なんでこんな映画を作ったのかわからないという、不思議な連合体になっている。映画館がくだらない暇つぶしの場所になった。昔は映画に行くというと、血湧き肉躍る思いだったが、今はそれがない。肉を切らせて骨を断つそういうパワーがないんだよ!


「『性』を貶める者は『生』を貶める者」

―タブーに切り込んで、血湧き肉躍るような作品をこれから出すなら、活動の場はネットになりますか。

そうだね。やはりネットの世界だね。こういうことは、中国の方がよっぽどパワフルなんですよ。中国でも『全裸監督』がDVDで発売されて爆発的な人気だ。1週間もたたないうちに中国から取材が来た。今度、日本の素晴らしいエロチシズムの世界を集約して中国で配信することになっている。2億-3億人が見てくれると思う。日本は中国にはかなわないが、唯一リスペクトされているのは、へそ下三寸のところだ。彼らは日本から学んでいる。

日本に来る中国の観光客も、ホテルに入って、60インチの大スクリーンでとにかくAVを見ているらしい。私が1977年に28万円かけてグアムに渡り、大島渚先生の『愛のコリーダ』(無修正版)を見に行ったようなものだ。中国に対抗できるのは、もはやAVしかないよ!ほかに何がある?へそ下三寸で後れを取ったらもう生きる道はないよ。皆さんにとってのプライドなんですよ。だから私のことを、置き引きとか、万引きとか、ポン引きより少しましくらいに思っていたらいけないよ!

―そんなこと思っていませんよ!

とにかく、「性」を貶める者は「生」を貶める者だ。もう一度自分たちの「性と生」を直視して、嵐の中で小舟を漕いでいる自分を大切にしないといけない。でもどうしたらいいのか、その方法を見失ってしまった人たちに力を与えられるのは何かというと、上の方をジェット機で飛んでいく孫さんやクルーザーで走り抜けていく柳井さんではない。こっちは小さな板きれ1枚なんです。こういう私の存在を知れば、人生の生き方は違ってくる。三食抜いても『狂熱の日々』は見に来ないといけない。多難な時代を迎える時代を生き抜くパワーを充電してもらいたい。AVと小馬鹿にせずに見に来れば、何百億円もの価値を得られる。

―最後に、これからやってみたいことはありますか。

この先、何がやって来るか分からないが、アンテナを張ってそれにしがみついていく。5年、10年先なんて関係ない。今をたくましく生き抜く。今日を生き抜く中からふとしたヒントを得られる。俺は生きるためなら何でもできる。エロチシズムをやりたくて生きてきたんじゃない。二度と貧乏したくないという思いに駆られるように生きてきたんだ。中小企業のお父さんも、資金繰りの毎日かもしれないが、それでこそ中小企業の親父だ。お得意様の機嫌を伺いながら生きていくような芸は中小企業の親父にしかできない。親父は資金繰りしてりゃいいんだよ。これは俺の仕事だと、よく認識しないといけない。

資金繰りから解き放たれたいとか、税務署とのやりとりから解き放たれたいとか考えるんじゃなくって、自分にしかできない資金繰りに骨身を惜しまないことがプライドだ。新しい商品開発とかいってるけど、なにか錯覚してるんだよ。資金繰りをやってるときにこそ、後光が差すんだよ!私のような人間の役割は、みんなに元気や情熱を届けることだからね。だって俺みたいな奇人変人、詐欺師、ペテン師はほかにいないからね!

村西とおる(むらにし・とおる)
【略歴】1948 年9月9日生まれ、福島県いわき市出身。福島県立勿来工業高校卒業後、バーテン、英会話辞典のセールスマン、テレビゲームのリース業を経て、アダルト業界へ。北大神田書店グループを設立し「裏本の帝王」となった後、AV業界へ参入し数々の作品を制作。”顔面シャワー”、”駅弁”の産みの親であり、「AVの帝王」と 呼ばれている。人生で計7回の逮捕歴、米国で懲役370年の求刑、総額50億円の借金、心臓病による余命一週間宣告など、多くの苦難を経験。2019年には、村西氏の半生をモデルとした『全裸監督』のNETFLIX配信や、ドキュメンタリー映画『村西とおる 狂熱の日々』の上映などで、注目を浴びている。
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