深夜営業が多かったサッポロビール、働き方改革のカギは「社員におまかせ」?
サッポロビールは「働き方改革2020」として働きやすい環境整備に向けた各種制度を2017年度から順次導入し、着実に効果を上げている。「健康」「生産性向上」「生活」の充実をテーマに環境を整備。20年度に営業利益で16年度比23億円増と総拘束時間(年平均)で同112時間の削減を目指す。(編集委員・井上雅太郎)
サッポロは2009年頃から働き方改革に取り組んだ。宮崎仁雄人事部労政グループリーダーは「酒類の営業部門は顧客への対応で就業が深夜に及ぶこともあり、課題が多かった」と説明する。そこで16年秋に労使でプロジェクトを設置し、新しい働き方への環境整備に着手した。
働き方改革2020の新制度では(1)10時間の勤務間インターバル(2)テレワーク制度(3)時間有給休暇(4)スーパーフレックス―などを17年秋から18年にかけて導入。「多様な制度をほぼ同時期に導入したのは特徴的な取り組みだった」(宮崎グループリーダー)と振り返る。
勤務間インターバルは営業部門で不安視する意見があったという。当初11時間で導入する計画だったが、試験運用期間を経て、短縮への意向が多かったため10時間を採用した。これら各種の制度導入により働き方の自由度が増える。この管理方法について「ある程度はシステムで管理するが、あまり厳密に管理するより、結果が出せれば後は社員の裁量に任せることにした」(同)と語る。
導入成果では19年(1―9月)の月平均労働時間を18年比で4時間3分削減した。中でも営業部門は4時間45分も大きく減らせた。19年に実施した社内アンケートでも「改革により会社が変わった」という回答が82%と17年比15ポイント増えたほか「改革のため行動・意識を変えた」という回答も96%と同18ポイント上昇した。
これを踏まえ、宮崎グループリーダーは「総拘束時間の目標は20年度に達成できそうだ」と見通す。ただ、生産性向上による利益目標は未達で「20年度に達成を目指し努力する」と奮起を促す。
実際の営業現場では「導入前に勤務間インターバルへの抵抗感があった」(内山夕香首都圏本部副本部長)と明かす。深夜の営業から10時間空けると、翌朝の仕事ができなくなる。そこでチームごとに携帯端末で就業時間を共有し、社員が互いにカバーしている。さらにテレワークやフレックス制度を組み合わせて運用すると「身体が楽になった」「仕事を早めに終わらせる努力をするようになった」など肯定する意見が増えたという。
また、働き方改革の一環として営業部門では産休明けの育児で時短が必要な女子社員が営業職に復帰できる「ペア制度」も同時期に始まった。フルタイム勤務の社員とペアを組み、緊急な対応が必要な場合はカバーする仕組み。フルタイムの社員にとっては1人増員を受けた形となる。
制度を利用する新川敦子広域流通本部第1営業部課長代理は「制度により営業として無理が効かないところの対応ができる。子どもがいても営業に戻れるというモデルになれれば」と評価する。