連携深まるトヨタ系。グループ内再編が加速
トヨタ自動車グループのサプライヤーが「グループ連携」を打ち出している。「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」や「MaaS(乗り物のサービス化)」では、駆動装置からセンサー、ソフトウエアまで幅広い領域をカバーし、システム提案できることがカギとなる。各分野に特化して競争力を磨いてきた各サプライヤーだが、それぞれの強みを結集し総合力を高めることで、システム提案の得意な海外メガサプライヤーに対抗する狙いだ。
「チームトヨタで戦う」
「トヨタ自動車グループ各社と連携し、各社の知見を活用した」。「第46回東京モーターショー」で、トヨタ紡織の沼毅社長が高らかに宣言し披露したのが、次世代車室空間「MX191」だ。自動運転を想定し、乗員や運転モードに合わせてシートが移動するなどの機能を備える。アイシン精機、デンソー、豊田合成、東海理化との共同開発の成果だ。
各社の役員クラスが集結し、コンセプト作りの段階から議論を深めた。従来はトヨタからの発注を介した連携が中心で「グループ内のサプライヤー間で壁があった」(トヨタ紡織首脳)。しかし今回はトヨタ紡織の豊田周平会長が旗振り役となり、5社の連携を促した。東海理化首脳は「チームトヨタで戦う」と力を込める。
国内で競争している暇はない
トヨタグループは5年ほど前から、特定のサプライヤーに強みの分野を集約する「ホーム&アウェー」と呼ぶグループ内再編を加速してきた。トヨタの経営効率化という側面が強いが、強みを集中して各サプライヤーの競争力を高める狙いもある。その上でキーワードとなるのが「連携強化」だ。
4月には電動車用駆動モジュールと、自動運転用ソフトウエア、それぞれを扱うサプライヤーによる共同出資会社も立ち上げた。アイシン幹部は「国内で競争している暇はない。海外と競争するための『ホーム&アウェー』だ」と断言する。
対極の流れ
各サプライヤーの経営資源や組織を機動的に再編して海外メガサプライヤーに対抗する戦略は、トヨタという傘の下にいるからこそできることだ。日産自動車やホンダは、特定の自動車メーカーの色を薄めることで、それぞれのサプライヤーの事業拡大を進めようとしている。トヨタグループの動きは、その流れとは対極にある。
デンソーやジェイテクトなど、トヨタグループサプライヤー首脳は口をそろえて「顧客は良いもの、競争力の高いものがほしい。トヨタの色は気にしていない」と断言する。「トヨタ色」を保ちながらも、世界に伍(ご)する競争力をつけようと、トヨタグループは新たなサプライヤーのあり方を模索している。
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