「パワートレーン分社化」というコンチの選択

連載・車部品の新たなカタチ♯2

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コンチはパワートレーン部門を分社化し、「ヴィテスコ」を設立

拡大路線をとってきた海外メガサプライヤーが、自動車業界の技術進化のスピードが速まる中で組織再編や既存事業の統廃合を急いでいる。独コンチネンタルや同ZF、加マグナ・インターナショナルなどは「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」の新潮流に対応しつつ、事業の効率化を進めている。

現状の規模では迅速な運営がしにくい

「意思決定をよりスピーディーにしていく必要があった」。「第46回東京モーターショー」の報道関係者向け発表会に登壇したコンチネンタルのニコライ・ゼッツァー取締役はパワートレーン部門の分社化の狙いをこう説明した。

東京モーターショー」登壇したコンチネンタルのニコライ取締役

同社はタイヤ事業を始業としており、パワートレーン部門は独シーメンスなどからM&A(合併・買収)で獲得し、手塩にかけて育ててきた。だが、車の電動化に伴い、内燃機関向け部品事業は縮小を迫られ、電動関連部品を強化する必要がある。

拡大を続けた現状の規模の組織では、迅速な運営がしにくいと考え分社化を決めた。パワートレーン部門を分社化することで、早急かつ大きな投資判断を求められてきたパワートレーン事業から解放され、当面はエンジン部品などを手がけない方針だ。

オーガニックな成長と独立性を重視

パワートレーン事業を担う新会社「ヴィテスコ・テクノロジーズ」は、20年4月に予定されるコンチの株主総会を経て、分社化が正式決定する。従業員は約4万人で、年間売上高は約80億ユーロ。保有する工場や研究開発の拠点数は50カ所にのぼる。ヴィテスコは内燃機関車やハイブリッド車(HV)などに対応した幅広い製品を持つ。

加えてコネクテッド(つながる車)対応、エネルギーマネジメントシステム(EMS)などに注力する。ヴィテスコのテクノロジー&イノベーション責任者、ステファン・レブハン氏は「M&Aなどで補完すべき部品などはなく、新体制では約2倍の需要に対応できるためオーガニックな成長が可能だ」と力を込める。すでに分社化に備え、19年1月から同部門の運営は独立。20年以降は自動車メーカーとの取引関係をコンチとヴィテスコで分別することを検討し、これまでのしがらみにとらわれない独立性が重要だという。

ヴィテスコは内燃機関車やHVなどに対応した幅広い製品を持つ

一方でコンチは部品からソフトウエアサービス分野への転換を加速している。ヴェルナー・ケストラーストラテジー&モビリティ・サービス事業責任者は「すでにコネクテッド分野の売上高は年間5億ユーロ(約600億円)。今後はセキュリティーソフトの更新、アプリケーション(応用ソフト)の販売などが増える」と展望を話す。30年までに関連サービスを含めて約15億ドル(約1600億円)の売上高になる見込みだ。年間数千万ユーロを投じて人材育成も強化し、次の成長事業の育成を急ぐ。

資産効率の最大化

競合他社も事業の整理に乗り出している。マグナはパワートレイン部門の油圧・制御事業を韓国のハノン・システムズに約12億3000万ドルで売却。北米や欧州などの10拠点にいる約4100人の従業員は同社に移管するなど組織内で再編を進める。

ZFもワブコなどに対して積極的にM&Aを仕掛けつつ、重複する事業は再編する。ZFは70億ドルを投じて20年内にワブコを買収する見通しで、商用車向けブレーキシステムなどを強化する。その買収に伴い、株式を20%保有するスウェーデンのハルデックスについては株式を売却する方針を9月に打ち出した。独占禁止法の抵触回避や組織の一本化が狙いとみられる。

マグナも拠点再編を進める

業界が変革を迫られる中、メガサプライヤーにとって新事業と既存事業の整理が課題となっている。M&Aなどで事業を急拡大してきた海外メガサプライヤーだからこそ、肥大化を回避し、資産効率の最大化と新分野への投資の両立が求められる。

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日刊工業新聞2019年10月31日に加筆修正

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COMMENT

巨人と呼ばれるメガサプライヤーはすでに多くの事業を抱えている。自動車向けの部品事業だけでなく、産業機械向けの部品事業や家電向けの電子部品事業など、幅広い分野に参入している企業も少なくない。独ボッシュなどは米アップルのアイフォーンにセンサーを納入しているとされる。それだけ自動車で培った技術やノウハウ、品質に一定の評価があり、他の分野への応用性を見いだしてきた企業努力のおかげだろう。横断的な連携も活発で、事業の多角化によってリスクの分散やイノベーションの創出につなげてきた。だが、今、その「大きい」という武器を見つめ直す時期に来ているかもしれない。これまでも事業再編を行うことはあったが、今回は主力だった自動車分野が変革を迎えている。所有から利用へとニーズが変わる車業界では、規模が通用する産業では無くなる可能性もある。そのとき、メガサプライヤーという存在はどう生き残り、どんな形になるのか。

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