スタートアップの強い見方、サブスクで「職人に相談」できる場所
浜野製作所(東京都墨田区、浜野慶一社長、03・5631・9111)が運営するモノづくり支援施設「ガレージスミダ」は、運営開始から本年で5年目を迎えた。これまで多くのモノづくりスタートアップ企業を輩出してきた支援体制をこのほど拡充。新サービス「ものづくり相談サービス」は常時、職人らに相談ができるサブスクリプション(定額制)の仕組みだ。スタートアップ企業にとって“真に必要とされる支援体制”の構築を目指す。
近年、都心を中心にモノづくりのインキュベーション(起業支援)施設が増えている。技術や製品が発展し、安価にIoT(モノのインターネット)に挑戦できるため、スタートアップ企業がモノづくりへ参入することも手軽になった。
一方、モノづくりスタートアップ企業を支援してきた同社は、その手軽さに不安を覚える部分もあるという。同社経営企画部の佐藤麻耶氏は「ハードウエアのモノづくりは用語や素材の加工、試作品の製作、費用などやることが多く知識がない人にとっては大変。また課題の言語化が難しく製造者との齟齬(そご)が生じやすい」と指摘する。
早さや資金繰りが重視されるスタートアップ企業にとって、少しのコストや時間のロスが命取りとなる。試作品の時点から量産を意識した設計・開発をすることは、こうしたロスの削減につながる。
気軽に安心
ハードウエア開発の全くの初心者でも、気軽に安心してモノづくりに挑戦できる場を提供したいという思いから生まれた新サービスが、「ものづくり相談サービス」だ。開発目的やスケジュールなどをヒアリングし、アイデアを形にするところから量産化まで、支援企業の段階に沿った支援を提供する。
価格帯は段階ごとに異なるが、従来より安価に設定し、起業間もないスタートアップ企業も利用しやすくした。また定額制の導入により発生する料金を明確化し、同社の強みである“いつでも職人に相談できる”という利点を、より身近に感じてもらえるようにした。
“共助”を基礎
同社が得意とするのは、次世代型風力発電機を作るチャレナジー(墨田区)など、先端テクノロジーの活用を目指し、高度な技術力を要する企業の支援。4月には技術コンサルティングをするO2(港区)と資本業務提携を締結。O2は大手メーカーなどで設計開発をしてきた経験をもつ人材が多数在籍する。O2がもつ要件定義や原理試作への知識と、浜野製作所のモノづくりのノウハウを掛け合わせることで、試作開発から量産化まで一気通貫の支援体制が強化された。
浜野製作所の小林亮経営企画部長は「支援開始から5年、ようやく量産までの体制が整った。残り5年で支援の幅を広げ、モノづくりの構造を変えていく」と、今後の目標を語る。下町らしい“共助”を基礎としたスタートアップ支援が、日本のモノづくりの未来を明るく照らす。(取材・大串菜月)