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秘伝のたれが人気だった有名焼き鳥店、倒産に追い込んだ社長の“暴走”

「ひびき」、金融機関が次々融資で拡大路線行き詰まる
秘伝のたれが人気だった有名焼き鳥店、倒産に追い込んだ社長の“暴走”

(写真はイメージ)

ひびきは1992年1月に設立。95年に第1号店となる「やきとりひびき八幡通り店」を埼玉県川越市内に出店した。以降、辛みとうまみを兼ね備えた秘伝のみそだれが人気を博し、業容は拡大していく。代表である日疋好春社長は「全国やきとり連絡協議会」(全や連)の結成参画をはじめ、業界活動、地域活動を精力的に行うことで「ひびき」の存在感は徐々に高まっていった。

そんな「ひびき」を周囲は放っておかなかった。金融機関は次々と融資を実行するほか、出資に応じる投資ファンドも。自慢のみそだれは、モンドセレクションなど数々の賞を受賞して注目を集め、店舗は国内だけでなく、イタリアなど海外にも進出。いつの間にか年商は20億円を超えていた。

成長著しい優良企業に見えた「ひびき」だが、急拡大を理由に有利子負債は増え続け、借り入れ過多は明らかな状態だった。だが投資が止まることはなく、従前は年間1店舗であった出店ペースは、13年頃より年間4店舗に。さらに今度はM&A(合併・買収)に動き出し、18年から19年にかけて二つの会社を買収するなど、その“前のめり”な姿勢が変わることはなかった。

だが、この話には裏がある。なぜ、この借り入れ過多の会社がここまで投資を続けられたのか。そこには不正会計があった。10年ほど前から粉飾決算に手を染め、金融機関との関係を維持。さらに複雑かつ大規模な多重リースを犯し、不正な資金調達を行っていたことが経営破綻を機に明らかとなったのだ。

積極的な投資活動に果敢な代表の行動力。その存在感の高さからメディア露出も目立っていた「ひびき」。こうした背景が関係者の目を曇らせてしまったのか。不正会計を見抜けず、会社の暴走を許してしまった典型的な倒産事例といえる。突然の民事再生法申請に、驚きと怒りを覚える債権者は多かったという。
(帝国データバンク情報部)

<企業概要>
(株)ひびき
住所:川越市霞ケ関北2―3―2
代表:日疋好春氏
資本金:1億円
年売上高:約12億2000万円(19年6月期)
負債:約77億949万円
日刊工業新聞2019年11月5日

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