METI
若き投資家が語る、アフリカが期待する日本のイノベーション
サムライインキュベートアフリカ寺久保拓摩氏
デジタル革命によって変貌を遂げるアフリカビジネス。そんな現地に根を下ろし、スタートアップ育成に力を注ぐ若き日本人投資家がいる。アフリカに特化したベンチャーキャピタル(VC)として2018年に設立された「サムライインキュベートアフリカ」社長の寺久保拓摩氏。「日本とアフリカをつなぐ架け橋となりたい」と語る寺久保氏の目に映るアフリカのスタートアップシーンの最新事情、そして日本にもたらす可能性とはー。
当社は2018年5月にサムライインキュベートの子会社として設立されました。ルワンダ、ケニアなど東アフリカを中心に、シードステージ向け投資を始めています。現在のファンド規模は3億4000万円、スタートアップ40社程度に1社あたり約500万円から最大1500万円程度の出資を計画しており、すでに14社に出資しました。
アフリカには、ケニアだけでも約1300社、南アフリカには約1000社ものスタートアップが生まれています。こうしたアフリカ中のスタートアップを集めたインキュベーション拠点を今秋、南アフリカにオープンする計画もあります。
実はこの6月に社名変更したのですが、旧社名「リープフロッグベンチャーズ」は、新興国の発展において段階的な進化を踏むことなく、一気に最先端に到達する「リープフロッグ現象」に由来します。
それは同時に「先進国」「新興国」の垣根も飛び越えようとしています。日本は先進国としてアフリカを支援する立場が色濃かったように思いますが、これからは逆にアフリカのイノベーションから学ぶべきところが少なくないはず。
世界中がアフリカ発のイノベーションを取り込み、ともに成長を遂げるー。そんな思いが込められています。もちろん社名が変わってもその信念が揺らぐことはありません。
アフリカに対し、貧しい地域とのイメージを持つ人はいまなお多いのですが、課題が深刻なほどイノベーションの余地は大きく、現状に対する飢餓感を抱いているからこそ破壊的なイノベーションにつながるのです。
携帯電話を通じて「仮想住所」を発行し、郵便物を届けるサービスは、住所を持たない層が存在するアフリカならではのビジネスのように見えるかも知れませんが、テクノロジーが進展する中で果たして今までのように特定の「場所」に届ける必要があるのかといった根本的な疑問を突きつけます。
日本でも宅配便の再配達問題が浮上しているように、利用者が「受け取りたい場所」に届けることが物流の最適化という「革新」につながるのです。
アフリカのスタートアップエコシステムは1周目にあるといえます。起業数や投資件数の増加だけでなく、今後は、それぞれの質が伴っていくフェーズに入るとみています。欧米のVCやインキュベーターの本格参入も相次ぐでしょう。だからこそ、今のうちに地歩を固めたいと思っています。
数あるVCの中で、僕らが特にこだわるのは、ひとつの企業を支援するのではなく、スタートアップ同士を連携させ、ひとつの産業としてともに成長させる視点です。
例えば、生産、販売から決済、物流といった一連のバリューチェーンを、投資先同士をつなげることで作り出すのです。また日本をはじめとする先進国企業と現地のスタートアップとの橋渡しも重視しています。
設備や装置の導入は、スタートアップが自ら手がけるより、先進国の事業会社のノウハウを活用した方がはるかに効率的だからです。こうしたことからみても、もはやアフリカは支援対象ではなく、ともにビジネスを作っていくパートナーなのです。
アフリカのスタートアップは「スマートマネー」を求めています。ただの事業資金なら要らない。自社の事業展開をさらに加速させるためのノウハウやプラスアルファの価値を提供してくれる相手と組みたいと。とりわけ、日本製品の品質や技術力には絶大な信頼を寄せています。
だからこそ、進出する日本側も、生産や販売だけに事業の軸足を置くのではなく、技術や製品を通じて、現地の生活が豊かになっていく発展過程を自社のビジネス戦略と結びつけてほしい。これからのアフリカビジネスに求められる姿だと思います。
欧米の起業家や投資家に比べ、日本人はアフリカマーケットに対する意識はまだまだ薄いのが実情です。しかし、市場規模やITの進展度合いをからしても、開拓の余地は大きく、イノベーションも生まれやすい。積極的に進出するべきと考えます。(談)
ともに成長遂げる
当社は2018年5月にサムライインキュベートの子会社として設立されました。ルワンダ、ケニアなど東アフリカを中心に、シードステージ向け投資を始めています。現在のファンド規模は3億4000万円、スタートアップ40社程度に1社あたり約500万円から最大1500万円程度の出資を計画しており、すでに14社に出資しました。
アフリカには、ケニアだけでも約1300社、南アフリカには約1000社ものスタートアップが生まれています。こうしたアフリカ中のスタートアップを集めたインキュベーション拠点を今秋、南アフリカにオープンする計画もあります。
実はこの6月に社名変更したのですが、旧社名「リープフロッグベンチャーズ」は、新興国の発展において段階的な進化を踏むことなく、一気に最先端に到達する「リープフロッグ現象」に由来します。
それは同時に「先進国」「新興国」の垣根も飛び越えようとしています。日本は先進国としてアフリカを支援する立場が色濃かったように思いますが、これからは逆にアフリカのイノベーションから学ぶべきところが少なくないはず。
世界中がアフリカ発のイノベーションを取り込み、ともに成長を遂げるー。そんな思いが込められています。もちろん社名が変わってもその信念が揺らぐことはありません。
アフリカに対し、貧しい地域とのイメージを持つ人はいまなお多いのですが、課題が深刻なほどイノベーションの余地は大きく、現状に対する飢餓感を抱いているからこそ破壊的なイノベーションにつながるのです。
携帯電話を通じて「仮想住所」を発行し、郵便物を届けるサービスは、住所を持たない層が存在するアフリカならではのビジネスのように見えるかも知れませんが、テクノロジーが進展する中で果たして今までのように特定の「場所」に届ける必要があるのかといった根本的な疑問を突きつけます。
日本でも宅配便の再配達問題が浮上しているように、利用者が「受け取りたい場所」に届けることが物流の最適化という「革新」につながるのです。
バリューチェーンを作り出す
アフリカのスタートアップエコシステムは1周目にあるといえます。起業数や投資件数の増加だけでなく、今後は、それぞれの質が伴っていくフェーズに入るとみています。欧米のVCやインキュベーターの本格参入も相次ぐでしょう。だからこそ、今のうちに地歩を固めたいと思っています。
数あるVCの中で、僕らが特にこだわるのは、ひとつの企業を支援するのではなく、スタートアップ同士を連携させ、ひとつの産業としてともに成長させる視点です。
例えば、生産、販売から決済、物流といった一連のバリューチェーンを、投資先同士をつなげることで作り出すのです。また日本をはじめとする先進国企業と現地のスタートアップとの橋渡しも重視しています。
設備や装置の導入は、スタートアップが自ら手がけるより、先進国の事業会社のノウハウを活用した方がはるかに効率的だからです。こうしたことからみても、もはやアフリカは支援対象ではなく、ともにビジネスを作っていくパートナーなのです。
価値創造の相手求めている
アフリカのスタートアップは「スマートマネー」を求めています。ただの事業資金なら要らない。自社の事業展開をさらに加速させるためのノウハウやプラスアルファの価値を提供してくれる相手と組みたいと。とりわけ、日本製品の品質や技術力には絶大な信頼を寄せています。
だからこそ、進出する日本側も、生産や販売だけに事業の軸足を置くのではなく、技術や製品を通じて、現地の生活が豊かになっていく発展過程を自社のビジネス戦略と結びつけてほしい。これからのアフリカビジネスに求められる姿だと思います。
欧米の起業家や投資家に比べ、日本人はアフリカマーケットに対する意識はまだまだ薄いのが実情です。しかし、市場規模やITの進展度合いをからしても、開拓の余地は大きく、イノベーションも生まれやすい。積極的に進出するべきと考えます。(談)