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軽減税率「不測の混乱」は避けられるか?中小小売店、準備に遅れ

レジ補助金の認知度低く、首相も躍起
軽減税率「不測の混乱」は避けられるか?中小小売店、準備に遅れ

コンビニで電子マネーの入金をする安倍首相(代表撮影)

 10月の消費増税に伴う景気下支え策の柱となるのが、キャッシュレス・レジ決済時のポイント還元制度だ。安倍晋三首相は今月2日、中小小売り店が軒を連ねる戸越銀座商店街(東京都品川区)を訪れ、キャッシュレス決済の導入状況を視察した。実際に支払いを体験した安倍首相は「初めてだったので緊張したが、意外と簡単だった」と利便性をアピールした。ポイント還元制度の実施により「中小小売店にキャッシュレス決済に対応した端末の導入が進む」と政府関係者は期待する。

 消費増税にあわせて軽減税率制度が導入される。複数税率対応レジの導入や受発注システムの改修の費用の一部などを補助する「レジ・システム補助金(レジ補助金)」が用意されている。

 だが、中小小売店に目を向けると、準備の遅れが目立つ。日本商工会議所の調査によると、中小企業の約8割が「軽減税率制度へ対応する準備に取りかかっていない」という。中小企業からは軽減税率の準備について「必要か分からない」「何から取り組めばいいか分からない」といった声が出ている。

 導入時の混乱が広がりかねないと見た政府は、レジ補助金の制度を大幅に拡充。請求書管理システムなど補助対象を拡大したほか補助率も引き上げた。

 だが、レジ補助金の導入状況は約9万2000件(1月末)。政府は18年度補正予算で約561億円を措置し、総額1094億円に基金を積み増したが、利用は約260億円(同)にとどまっている。レジ補助金は十分に用意されているものの、認知度は依然として低いのが実情だ。

 経済産業省は今月8日、軽減税率導入に向けて、レジメーカーやシステムベンダー各社と特別会合を開催。「中小企業団体や業界団体などと連携し、制度の普及広報を徹底する」(中小企業庁財務課)。

 一方、消費増税の転嫁問題も懸念される。政府は消費税率の引き上げを前に、4月から消費税の転嫁拒否を監視する「転嫁対策調査官(転嫁Gメン)」を約70人増員する。「前回の増税時と同じ水準まで人数を増やして、価格転嫁拒否の監視体制を強化する」(企業庁取引課)。全国に約600人弱を配置し、中小企業にしわ寄せがこないようにするのが狙いだ。

 政府は消費増税の準備に余念はないものの、中小企業の準備は十分とはいえない状況。官民一体となって早めの対応を講じなければ、消費増税による不測の混乱が想定される。
(文=山下絵梨)
日刊工業新聞2019年2月14日

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