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セブンーイレブンの激しい危機感。もっと顧客とオーナーに近づく

古屋社長インタビュー「我々も止まれば同質化して終わる」
 国内のコンビニエンスストア業界の2018年の年間売上高は約10兆円。この9割を大手3社が占める。うち4割をセブン―イレブンが占め、ファミリーマート、ローソンと続く。コンビニは小売りだけでなく、公共料金の支払いなどインフラ機能も有し、人々の生活に欠くことのできない存在となっている。セブンがこのまま独走できるのか。セブン―イレブン・ジャパンの古屋一樹社長に聞く。

 ―18年はコンビニが総菜などの中食市場をけん引しました。この傾向は続きますか。
 「我々は『近くて便利』を追求している。近いというのは距離だけでなく心理的な近さ、便利というのはクオリティー(質)であり、買ったものがおいしかった、使いやすかったを意味する。今後、ますますシニア層や働く女性の利用が増え、近くて便利の需要は高まる。加盟各店にはもっと便利な店になろう、と呼びかけている」

 ―現状でも便利だと思いますが、どこが足りないのでしょうか。
 「中食需要に応えられるのがセブン―イレブンの最大の優位性だが、スーパーにも中食商品があり、お客様の選択肢がたくさんある。こうした中、絶えず新しいもの、もっとおいしいものを提供していかないとセブンの優位性を保つことはできない。常に危機感はある」

 ―コンビニ業界トップを走れる理由は。
 「我が社と他社の日販の差は、おにぎりやサラダなどデーリー品の販売額の差。創業以来、セブン商品だけを製造する専用工場があり、ここでの質、味の差が優位性となっている。だが他社もうちの製品を研究しており、我々も止まれば同質化して終わる。おいしさにこだわり、差別化を図り続けないといけない」

 ―便利さを高めるためには、店舗数の拡大が必要となりますか。
 「コンビニは全国に約5万8000店舗あり、以前のように空白地帯はないが、数千人が働くようなオフィスビルでは、1階や地下のほかに、中階にも出していく。要望があればパーキングエリアにも出す。お客様の不便が解消できる場所には積極的に出店する」

 ―実施中の加盟店が本部に収めるインセンティブチャージ1%の減額については。
 「コストではなく、投資と思っている。1店平均月額6万円弱だが、店舗スタッフやオーナーの士気が上がり、お客さまにも伝わって、売り上げ増につながっている。加盟店と本部に相乗効果を生んでいる」

【記者の目】
 「売れる商品を提供し続けることが、お店への最大のサポート」(古屋一樹社長)と言い、取材中に何度も「おいしさ」という言葉が出てきた。こだわりの表れだろう。店舗との契約も90%以上が更新しており、オーナーの事業承継も順調な様子。徹底して顧客とオーナーを重視した明快な戦略が強さの秘密と思えた。
(日刊工業新聞・丸山美和)
インセンティブ減額に「相乗効果を生んでいる」と古屋社長
日刊工業新聞2019年2月13日

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