経営者の「生涯現役」がもたらす廃業危機のリスク
連載・事業承継指南(4)
**後継者問題は早めに相談を
「2018年版中小企業白書」によると、60歳以上の経営者で後継者が不在の割合は48・7%、約半数の企業で後継者が不在だ。中小企業庁によると、2025年頃には、経営者の約6割が70歳を超えて、多くの企業が廃業することによって、650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が喪失すると試算されている。特に後継者不在で廃業する企業の中には、黒字で廃業してしまう企業や地域にとって必要不可欠な企業も多く、これらの企業をどうしたら残せるのか、という点が問題になっている。
それでは、そもそもなぜこのようなことが起きているのか。
1番目の理由として、親族内の承継が減ってきていることがあげられる。少子化や職業選択の多様化、業界の先細りにより親が子どもに継がせない、などがある。2番目の理由として、M&A(合併・買収)にネガティブなイメージを持つ経営者がまだまだ多く、他社に引き継がずに自分の代で廃業という選択をしてしまうケースもある。3番目の理由として、特に小規模事業者の方に多いが、M&Aは巨大企業で行われるもので、自分の会社や店がM&Aの対象になるわけがないと思っている経営者も少なくない。後継者不在で廃業しようと考え、取引先に廃業のあいさつに行った際に引き継ぎを打診されて経営者自身が驚くケースもある。4番目の理由として、事業承継イコール相続、と考える人が多く、親族や役職員ら周辺の人が経営者に面と向かって事業承継の話を切り出せないため、経営者自身があまり意識していないケースも多くみられる。経営者本人は「生涯現役」というと聞こえは良いが、親族や長い間一緒に働いてきた従業員が常に廃業リスクにさらされている状況に気づくべきだ。会社が継続できる可能性があるにもかかわらず、廃業を選択してしまうのはあまりにも社会的損失が大きい。
各都道府県に設置されている「事業引継ぎ支援センター」をはじめとする公的機関に相談することが重要だ。(おわり)
◇中小企業基盤整備機構 事業承継・引継ぎ支援センター 事業承継コーディネーター 種山和男
これまでの記事はこちら
第1回/深刻化する後継者不足、1番の問題は?
第2回/経営者と後継者の“対話”で企業の課題が浮かび上がる
第3回/「事業承継税制」を活用する時の注意点は?
「2018年版中小企業白書」によると、60歳以上の経営者で後継者が不在の割合は48・7%、約半数の企業で後継者が不在だ。中小企業庁によると、2025年頃には、経営者の約6割が70歳を超えて、多くの企業が廃業することによって、650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が喪失すると試算されている。特に後継者不在で廃業する企業の中には、黒字で廃業してしまう企業や地域にとって必要不可欠な企業も多く、これらの企業をどうしたら残せるのか、という点が問題になっている。
それでは、そもそもなぜこのようなことが起きているのか。
1番目の理由として、親族内の承継が減ってきていることがあげられる。少子化や職業選択の多様化、業界の先細りにより親が子どもに継がせない、などがある。2番目の理由として、M&A(合併・買収)にネガティブなイメージを持つ経営者がまだまだ多く、他社に引き継がずに自分の代で廃業という選択をしてしまうケースもある。3番目の理由として、特に小規模事業者の方に多いが、M&Aは巨大企業で行われるもので、自分の会社や店がM&Aの対象になるわけがないと思っている経営者も少なくない。後継者不在で廃業しようと考え、取引先に廃業のあいさつに行った際に引き継ぎを打診されて経営者自身が驚くケースもある。4番目の理由として、事業承継イコール相続、と考える人が多く、親族や役職員ら周辺の人が経営者に面と向かって事業承継の話を切り出せないため、経営者自身があまり意識していないケースも多くみられる。経営者本人は「生涯現役」というと聞こえは良いが、親族や長い間一緒に働いてきた従業員が常に廃業リスクにさらされている状況に気づくべきだ。会社が継続できる可能性があるにもかかわらず、廃業を選択してしまうのはあまりにも社会的損失が大きい。
各都道府県に設置されている「事業引継ぎ支援センター」をはじめとする公的機関に相談することが重要だ。(おわり)
◇中小企業基盤整備機構 事業承継・引継ぎ支援センター 事業承継コーディネーター 種山和男
これまでの記事はこちら
第1回/深刻化する後継者不足、1番の問題は?
第2回/経営者と後継者の“対話”で企業の課題が浮かび上がる
第3回/「事業承継税制」を活用する時の注意点は?
日刊工業新聞2019年2月15日