飲酒欲求を抑制する新薬が承認された!依存症の治療に一役
厚労省が新薬13製品22品目を承認
厚生労働省は8日、新薬13製品22品目を承認した。アルコール依存症患者の飲酒量を低減する薬や、重い肝硬変を伴うC型肝炎ウイルスの治療剤など、日本で初めての薬剤もある。未充足だった医療ニーズを満たすと期待されるが、各メーカーは発売後に疾患啓発や販売促進活動を通じて適正使用を推進し、新薬の迅速な普及につなげられるか試される。
大塚製薬はアルコール依存症患者における飲酒量を低減する「セリンクロ錠10ミリグラム」(一般名ナルメフェン塩酸塩水和物)の製造販売承認を取得した。飲酒の1―2時間前に服用することで飲酒欲求を抑える。抗酒薬や断酒維持が目的の断酒補助剤は国内でも既に販売されているが、多量な飲酒を繰り返すアルコール依存症患者が飲酒量を減らしていく過程を補助する薬剤は無かったという。デンマーク製薬のルンドベックと共同開発した。
ただ、アルコール依存症治療の主体は心理社会的治療とされる。自分の気持ちや行動をコントロールして飲酒量を減らし、より良い社会生活を送るための治療方法で、日記による方法や動機づけ面接法、認知行動療法などがある。セリンクロの服用者は心理社会的治療との併用が求められる。大塚製薬はこうした点も含めた啓発・周知活動を関連学会との協力のもとで展開し、患者の状態に応じた適切な治療を目指す。
ギリアド・サイエンシズ(東京都千代田区)は、非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症などに対する治療薬「エプクルーサ配合錠」(一般名ソホスブビル/ベルパタスビル配合錠)の承認を得た。日本では従来、非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症に対して承認された薬はなかった。
肝硬変は程度により、代償性と非代償性に分けられる。非代償性肝硬変は、肝機能を代償することができない程度にまで悪化している状態を言い、静脈瘤出血や腹水、黄疸といった症状が出る。ギリアドはC型肝炎薬「ソバルディ」「ハーボニー」を既に販売しており、エプクルーサが発売されれば「C型肝炎の進行する病態のすべての過程において治療ができる品ぞろえになる」(広報)。
アステラス・アムジェン・バイオファーマ(AABP、東京都千代田区)は骨折の危険性の高い骨粗しょう症治療薬「イベニティ皮下注105ミリグラムシリンジ」(一般名ロモソズマブ遺伝子組み換え)が承認された。海外では米アムジェンとベルギーのユーシービーが開発してきたが、日本ではAABPとアステラス製薬が共同開発を進め、世界各国に先駆けて承認を取得した。
骨密度が低かったり、骨折の既往があったりする場合などは骨折のリスクが高いと考えられている。骨粗しょう症薬は既存品が多くあるものの、イベニティは骨形成促進と、古くなった骨を壊す働きを抑える骨吸収抑制の両作用で骨折リスクを低下させる。「骨粗しょう症に起因する骨折は、要介護の状態につながる主な要因の一つ」(スティーブ・スギノAABP社長)。同剤がそうした課題の解決にどれだけ貢献できるか注目が集まる。
(文=斎藤弘和)
大塚製薬はアルコール依存症患者における飲酒量を低減する「セリンクロ錠10ミリグラム」(一般名ナルメフェン塩酸塩水和物)の製造販売承認を取得した。飲酒の1―2時間前に服用することで飲酒欲求を抑える。抗酒薬や断酒維持が目的の断酒補助剤は国内でも既に販売されているが、多量な飲酒を繰り返すアルコール依存症患者が飲酒量を減らしていく過程を補助する薬剤は無かったという。デンマーク製薬のルンドベックと共同開発した。
ただ、アルコール依存症治療の主体は心理社会的治療とされる。自分の気持ちや行動をコントロールして飲酒量を減らし、より良い社会生活を送るための治療方法で、日記による方法や動機づけ面接法、認知行動療法などがある。セリンクロの服用者は心理社会的治療との併用が求められる。大塚製薬はこうした点も含めた啓発・周知活動を関連学会との協力のもとで展開し、患者の状態に応じた適切な治療を目指す。
C型肝炎ウイルスの治療剤なども
ギリアド・サイエンシズ(東京都千代田区)は、非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症などに対する治療薬「エプクルーサ配合錠」(一般名ソホスブビル/ベルパタスビル配合錠)の承認を得た。日本では従来、非代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス感染症に対して承認された薬はなかった。
肝硬変は程度により、代償性と非代償性に分けられる。非代償性肝硬変は、肝機能を代償することができない程度にまで悪化している状態を言い、静脈瘤出血や腹水、黄疸といった症状が出る。ギリアドはC型肝炎薬「ソバルディ」「ハーボニー」を既に販売しており、エプクルーサが発売されれば「C型肝炎の進行する病態のすべての過程において治療ができる品ぞろえになる」(広報)。
アステラス・アムジェン・バイオファーマ(AABP、東京都千代田区)は骨折の危険性の高い骨粗しょう症治療薬「イベニティ皮下注105ミリグラムシリンジ」(一般名ロモソズマブ遺伝子組み換え)が承認された。海外では米アムジェンとベルギーのユーシービーが開発してきたが、日本ではAABPとアステラス製薬が共同開発を進め、世界各国に先駆けて承認を取得した。
骨密度が低かったり、骨折の既往があったりする場合などは骨折のリスクが高いと考えられている。骨粗しょう症薬は既存品が多くあるものの、イベニティは骨形成促進と、古くなった骨を壊す働きを抑える骨吸収抑制の両作用で骨折リスクを低下させる。「骨粗しょう症に起因する骨折は、要介護の状態につながる主な要因の一つ」(スティーブ・スギノAABP社長)。同剤がそうした課題の解決にどれだけ貢献できるか注目が集まる。
(文=斎藤弘和)
日刊工業新聞2019年1月14日