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“ツイッター"の成長をけん引する動画の威力

連載・デジマ新機軸(3)Twitter Japanの味澤上級執行役員に聞く
“ツイッター"の成長をけん引する動画の威力

Twitter Japanの味澤将宏上級執行役員

 動画コンテンツがSNS(会員制交流サイト)の成長をけん引している。短文投稿サイト「Twitter(ツイッター)」では全世界で毎日数十億回(日本は全体の約2割)視聴され、ビジネスにおいても重要な役割を担っている。日本市場における2018年第3四半期の売上高は前年同期比44%増の1億3000万ドル(約147億円)。その約5割を動画広告事業が占めた。「今後も動画広告事業に注力する」と意気込むTwitter Japan(東京都中央区)の味澤将宏上級執行役員に動画広告事業の現状や今後の展望などを聞いた。

今何が起きているかを知る


 ―ツイッターの成長を動画広告事業がけん引しています。
 広告コンテンツに限らず、ツイッター上で動画を楽しむ行動が一般化してきた。個人や法人による動画投稿の機会が増え、動画を視聴することも当たり前になった。動画広告事業の伸長の前提にはこうした変化がある。その上で動画広告は静止画の広告などに比べて情報量が多くエンゲージメントを強められるため、他の広告より使われる。

 また、モバイル動画広告市場では(無効なクリックなどを行い、広告費用に対する成約件数や広告効果などを不正に水増しする)アドフラウド問題などが指摘され、ブランドセーフティーの観点で安全な媒体に出したいという広告主の需要が高まっている。このため(複数の媒体を束ねて広告配信ネットワークを作り、それらの媒体に広告をまとめて配信する)アドネットワークへの出稿が減り、SNSや動画投稿サイト「YouTube」が動画広告の配信先としてプライオリティが上がっていることも影響しているのだろう。

 ―動画の増加で“短文投稿サイト”らしくなくなってきましたね。
 ツイッターは“短文投稿”も特性の一つだが、それ以上に今何が起きているかを投稿したり検索したりできる場という特性が強い。この特性と動画を投稿する動きの相性がよい。一般の利用者やテレビ、紙メディアが(直前に起きた)事件や事故の動画を撮影して投稿する場になっている。

ツイッターでは動画の投稿・視聴が一般化してきている

 ―直近はライブ動画を活用した広告サービスにも注力されていますね。
 広告主が製品の発表会などを広告コンテンツとしてライブ配信する取り組みが増えた。ツイッターは今この瞬間を共有するプラットフォームで、インタラクティブ性がある。それはライブとよくマッチする。今後、さらに伸びる期待がある。また、(ニュースやスポーツなどの)優良なライブ動画コンテンツを投稿するパートナーがおり、パートナーのライブ動画に広告が入れられるサービスも伸びている。今後はこのパートナーをさらに増やしたい。

興味関心でつながる場を生かす


 ―SNS広告は全体でも大きく伸びています。(※)
 広告主の間ではSNS上で話題になることでモノが動く(つまり商品が売れる)という認識が広がっている。昔は(テレビなどの)マス広告で動かせていたものが動かせなくなってきた。これによってテレビCM偏重だった大企業の広告主がSNSで動画広告を配信するようになった。その中で、ツイッターは知り合い同士ではなく、興味や関心で利用者同士がつながっており、利用者は「面白いからこれを見て」と投稿する。企業にとっては広告コンテンツなどを通じて自社製品などがそのように投稿され、話題になるのが一番よい。そのため、ツイッターは広告出向先に向いている。

※SNS広告の伸長:矢野経済研究所によると17年度のSNS広告市場は前年度比34.6%増の1594億円。伸び率はインターネット広告市場全体(11.7%)より大きい。今後は18年度に2000億円を超え、22年度には4400億円程度になると予測している。
 ―一方、利用者同士が交流する場に広告が入ってくると、邪魔者に映りはしませんか。
 我々の広告サービスは利用者の動向を分析して興味関心にあった広告が配信できれば、たとえ広告だとしても利用者にとって(邪魔者ではなく)価値の高いコンテンツになるという発想で始めた。今後も当初からの発想の精度を上げていきたい。

 ―ターゲティングの精度が重要ということですね。一方、他のSNS広告に比べると、ツイッターは匿名で利用できる分、その精度が劣るということはありませんか。
 そもそもこの商品は20代の女性が買うだろうといった年代や性別によるターゲティング自体が本当に正しいのか。それはそれで行ってもよいのだろうが、ツイッターにおけるツイートの内容やフォロー傾向を基に導き出した「この人はこの分野に興味関心がある」といった情報をベースにターゲティングした方が正しいのではないかとも思う。

 ―SNS広告全体でさらなる成長に向けた課題はありますか。
 テレビCMとSNS広告による投資対効果を同じ尺度で語れていない点だ。それができれば広告主が目的に応じて最適な組み合わせを導き出せる。テレビCMとSNS広告を同等に扱えるような方策を我々も考えていきたい。

 

連載・デジマ新機軸


【01】ネット動画全盛時代、CM制作会社のピンチかチャンスか(2018年12月10日配信)
【02】テレビ関係者も前のめり、動画に“触れる”新技術が拓く市場(2018年12月11日配信)
【03】“ツイッター"の成長をけん引する動画の威力(2018年12月12日配信)
【04】伸び悩む「ラジコ」、データ活用でブレークスルーはあるか(2018年12月13日配信)
【05】メガネスーパー再建にも貢献、DMはデジタルで再成長する(2018年12月14日配信)
ニュースイッチオリジナル
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
若年層を中心に今や情報検索ツールは「ポータルサイトよりもSNS」という声をよく聞きます。その中でも最新情報をツイッターで検索する人は多く見かけます。こうしたことも広告事業の伸長に影響を与えているようです。また、ツイッターの利用者のうち、日本の利用者は世界的にも一人当たりのツイート数などが多くアクティブに利用されているです。「匿名」はやはり日本人に向いているのでしょうか。

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企業にとってデジタルマーケティングが欠かせない時代になりました。その流れを受けたCM制作会社の動きや動画に関わる新たなテクノロジー、デジタルを生かしたアナログメディアの挑戦などを追いました。

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