ニュースイッチ

関数電卓は東南アジアに“勝算あり”の理由

カシオ計算機、理数系教育熱を追い風に拡販
関数電卓は東南アジアに“勝算あり”の理由

ベトナムの数学授業では関数電卓が使われている

 カシオ計算機は東南アジア諸国を中心に、関数電卓の営業活動を強化する。インドネシアの教育文化省とパートナーシップ契約を結んだのを皮切りに、ベトナムやタイ、フィリピンなどの教育省庁へ売り込む。現地民間企業が主催する数学五輪や物理コンテスト、科学コンテストなどへの協賛や賞品に関数電卓を提供するなどして、認知度の向上を図る。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)時代を前に海外でも理数系教育熱が高まっており、これを追い風に拡販する。

 インドネシアとのパートナーシップでは関数電卓を使用した数学授業の提案に加え、教師の育成や学生のスキル向上を支援する。バングラデシュやパキスタンでも同様の活動を進める考えだ。

 関数電卓に電子辞書、電子楽器を加えたカシオ計算機の教育事業部門の年間売り上げは約854億円。関数電卓は日本では知名度が低いが、欧米やアジアなどでは小中高校の数学授業向けに広く使われているという。

 カシオの関数電卓の年間出荷台数は約2500万台。教育機器のため、一度採用が決まると継続的に毎年、購入が見込めるほか、仕様やキー配置が国や学校ごとに異なるため、競合メーカーに模倣されにくい利点がある。

 難関校受験競争が加速する日本と同様、外国でも理数系教育熱が高まっている。東南アジアや中近東、中国などでは経済成長で子どもの教育に投資する傾向が強まり、上流家庭だと海外大学に留学した親も多いため「自分の子どもも有名大で学ばせようと、数学五輪や物理コンテストに積極的に出場させる親が多い」(太田伸司執行役員)という。
(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2018年11月23日

編集部のおすすめ