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有力サンダルメーカーの倒産、“キャラ立ち"を阻んだ価格戦略の誤算

マルチウ産業、低価格志向も自社の企画力にこだわる
 サンダル類の生産で全国トップクラスを誇ったマルチウ産業は、8月28日に民事再生法を申請した。1968年5月の設立以来、バンダイやサンリオなどのキャラクターをデザインした商品は人気を集めた。国内の大手量販店や小売店、アパレルチェーンの多くに納入され、ピーク時の2002年3月期の年売上高は54億1600万円を計上していた。

 しかし、少子化で全体のパイが縮小するなか、競合製品にも押されて減収基調が続いた。11年3月期の年売上高は27億1400万円とピーク時からほぼ半減。この間、仕入価格の上昇を受けて主力商品の値上げを複数回実施したものの、これを機に売り上げが急減した。このため、12年には地元の中小企業再生支援協議会による支援を仰いだ。

 だが、肝心の売り上げ減少に歯止めがかからなかった。17年3月期の年売上高はついに20億円割れ。翌期は若干回復したが、5期以上連続して経常段階から赤字を計上。債務超過額は12億円強にまで膨らみ、資金繰りも限界に近づくなか民事再生法申請に至った。

 経営悪化要因を振り返ると、価格戦略面での誤算が大きい。消費者の低価格志向が強まるなか、同社の商品価格帯は1足2000円から3000円の「中価格帯」が中心。自社の商品企画力を発揮したモノづくりにこだわるあまり、中価格帯の商品販売から脱することができず、消費者ニーズに的確に対応できなかった面は否めない。また、主要販売先の大手靴小売りチェーンの店舗減少も響いた。

 今後は、低価格帯のライセンス商品を扱える強みで、売り上げ増を見込む。同時に、高価格帯を含む人気サンダルブランドにも注力する。金融機関や取引先の理解を得て、民事再生法を機に、長らく続いた減収・赤字体質から脱却できるかどうか。再建のカギはこの1点にかかっている。
(文=帝国データバンク情報部)
<企業概要>
マルチウ産業(株)
住所:横浜市西区平沼1-2-23
代表:小川陽清氏
資本金:5000万円
年売上高:約19億8600万円(17年3月期)
負債:約27億762万円
日刊工業新聞2018年11月6日

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