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米中貿易摩擦による相場下落に盗難も…銅スクラップ問題にどう対応?

非鉄金属リサイクル全国連合会会長 六車龍三氏に聞く
米中貿易摩擦による相場下落に盗難も…銅スクラップ問題にどう対応?

非鉄金属リサイクル全国連合会会長・六車龍三氏

 ―米中貿易摩擦を受けて銅相場が大きく下落しました。

 「ストックしていた銅スクラップの価格が下がって流通が停滞している。(銅部品の加工工程で出る)新くずはある程度流れているが、(製品に使用された)古くずは動きが鈍い。また、黄銅棒メーカーは、欧州特定有害物質規制(RoHS)対応でカドミウムを減らすためにダライ粉(切削くず)の使用を抑えている。全体としてスクラップの荷動きは低調だ」

 ―中国が低品位スクラップの輸入規制を強化し、廃電線などが国内に滞留しています。

 「東南アジア諸国も輸入規制を強化している。これからは基本的にスクラップを国内でリサイクルする地産地消型の社会になる。中国はそれを政府がトップダウンでやろうとしている。日本もリサイクルの仕組みを根本から見直すチャンスだ」

 ―どのような対策が必要になりますか。

 「スクラップ問屋は以前より銅やプラスチックを分別する必要性に迫られてくる。実際、(廃電線を銅と樹脂に破砕分別する)ナゲット機を導入する問屋が増えている。ただ、(廃モーターなどの)雑品のリサイクルは利益を出すのが難しい。規模の小さい問屋も多く、対策に限界がある。どのような循環型社会にしていくのか、政府がグランドデザインを描く必要がある。そこから新たな処理プラントなどの産業も生まれてくるはずだ」

 ―問屋業界の取り組みは。

 「当会で立ち上げたリサイクル環境推進部会が本格的に活動を開始し、まずはスクラップの輸出動向などのデータを分析したリポートの発行を始めた。ユーチューブを使った情報発信も検討している。これまでは閉鎖的な業界だったことは否めない。情報交換を推進することでリサイクルへの意識が関係者間でさらに高まり、次のビジネス展開につながると期待している」

 ―銅スクラップの盗難が増えています。

 「数十トンの銅スクラップが盗まれるケースも出ている。盗難情報を検知できるネットワークの整備が必要だ。大切なリサイクル資源を安全に流通できる環境が求められている」
(聞き手=田中明夫)
日刊工業新聞2018年8月30日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
中国は2018年末に輸入規制を一段と強化する予定だ。廃モーターなどの滞留が進むことで不法投棄も懸念される。海外の旺盛な原料需要に頼ってきた日本のリサイクルの仕組みに変革が求められている。問屋業界は情報発信の取り組みから始めたが、雑品類のリサイクルは政府も含め社会全体で早急に対策が必要な課題になっている。 (日刊工業新聞社・田中明夫)

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