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「米中」2大市場が危ない!日系自動車メーカー、アジア新興国シフトじわり

「米中」2大市場が危ない!日系自動車メーカー、アジア新興国シフトじわり

Toyota Motor Thailand公式ページより

 日本の自動車メーカーの業績を左右する要因としてアジア地域(日中を除く)の重要性がじわりと高まっている。2018年4―6月の同地域での乗用車7社合計の販売台数は前年同期比15・3%増の132万台で、世界販売に占める比率は同2・1ポイント上昇の19・0%に伸びた。同地域では新車市場が回復しており、高いシェアを有する日系メーカーが確実に需要を取り込んだ。“貿易戦争”の影響などで米中の2大市場の先行きは不透明で、通貨安など新興国リスクもくすぶるが、中長期的には成長するアジア地域の深耕が欠かせない。

 18年4―6月期は日産自動車を除く6社がアジア地域で販売を伸ばし、スズキやマツダ、三菱自動車は2ケタ成長をみせた。トヨタ自動車はタイなどでの販売が好調なことに加え、原価改善も進んで同地域の営業利益が同38・3%増の1422億円と大幅に伸びた。

 東南アジアの新車市場は13年をピークに減少したが、15年を底に増加に転じた。インドも15年からの成長を維持する。東南アジアでの日系メーカーのシェアは8割に達し、インドでのスズキのシェアは5割。他国メーカーに先駆けて構築した強固な事業基盤が強みで、安定して稼げる市場に成長している。

 足元ではリラが急落した「トルコショック」の影響で新興国に通貨安懸念がくすぶる。ただ中西孝樹ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリストは「新興国ゆえに変動はあろうが長期的に市場成長は続く」と見通す。業界では東南アジアは年4―5%、インドは同8%程度の成長が見込めるとの見方が多い。

 多くの日系メーカーにとって一番の収益の柱は米国市場。だがトランプ政権の北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉や輸入車への追加関税検討などが懸念材料となっている。また中国の7月の新車販売は5カ月ぶりに前年割れ。米国との貿易戦争の先行き不安が要因の一つとみられる。
              
日刊工業新聞2018年8月29日
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
米中市場の重要性は変わらないが、今後、日系メーカーにとって業績を下支えするアジア事業の重要度がより一層高まりそうだ。

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